セッション情報 シンポジウム2「高齢者肝胆膵疾患に対する診療の工夫」

タイトル S2-11:

高齢者に対する膵頭十二指腸切除術クリニカルパスの適用とリスクファクター分析

演者 岡田 恭穂(東北大学 肝胆膵外科)
共同演者 水間 正道(東北大学 肝胆膵外科), 坂田 直昭(東北大学 肝胆膵外科), 林 洋毅(東北大学 肝胆膵外科), 中川 圭(東北大学 統合癌治療外科), 吉田 寛(東北大学 肝胆膵外科), 元井 冬彦(東北大学 肝胆膵外科), 片寄 友(東北大学 統合癌治療外科), 海野 倫明(東北大学大学院 消化器外科)
抄録 【背景・目的】膵頭十二指腸切除術(以下PD)は周術期管理や手術手技の進歩に伴い、high volume centerを中心に高齢者にも適用されることが多くなった。当科では2007年10月よりPDクリニカルパスを導入して安全性と均質性を担保した周術期管理を施行しており、超高齢者まで積極的に適用している。今回、高齢者に対するPDパス導入の利点と、高齢者の各因子がPDの臨床経過に与える影響を検討した。
【対象・方法】2007年10月以降2013年2月まで当科で施行したPD症例270例(SSPPD253例、PD13例、PPPD4例)を対象とした。75歳以上の高齢者群は50名(18.5%、平均77.7歳)であり非高齢者群(220名、平均61.4歳)と比較した。パス適用率・逸脱率に加え、術前因子(併存疾患、BMI、血液生化学検査)、術中因子(手術時間、出血量、門脈合併切除、膵管ステント留置)、術後因子(周術期合併症、Clavien分類・経口開始日・全粥食開始までの期間、各ドレーン抜去までの日数、術後在院日数)に分け、高齢者に特異的な周術期リスクを検討した。
【結果】高齢者群では術前アルブミン、リンパ球数、プレアルブミン、コリンセステラーゼの低値を認め、術前栄養指標は有意差を持って不利であった。また併存疾患率が高く(p<0.01)、特に高血圧(p=0.02)、脳血管疾患(p<0.01)、多重癌(p<0.01)合併率が高かった。手術時間、出血量及び周術期合併症発生率、在院死亡率、Clavien分類分布、各ドレーン抜去までの日数、術後2週間後のCONUT値変化、術後在院日数、逸脱率にも有意差は見られなかった。また超高齢者(80歳以上)は11例存在し、10例(91%)でPDパスが適用されたが、逸脱は2例のみであった。
【考察】高齢者はPD術前の栄養指標が劣り、併存疾患率が高いという不利な点を抱える。但し高齢者群は術前中後因子に加えて、周術期合併症、術後在院日数にも差を生じなかった。80歳以上の超高齢者にもPDパスは良好に適用されている。慎重な術前評価と適切なクリニカルパス適用によって高齢者でもPDは安全に遂行可能であり、系統的なリスク分析も可能となる。
索引用語 膵頭十二指腸切除術, クリニカルパス