抄録 |
【症例】60歳. 女性. 【主訴】尿黄染. 【既往歴】19歳, 虫垂炎切除. 36歳, 子宮筋腫切除. 【生活歴】喫煙なし. 飲酒なし. 輸血なし. 職業:化粧品販売員, 2013年6月~7月末頃までダイエットサプリメント(バーンアップ, メガカット)を内服 【現病歴】2013年7月下旬から食欲低下あり. 8月4日, 皮膚黄染あり近医で受診した. T.Bil 13.0 mg/dl, AST 1882 U/l, ALT 2237 U/l, ALP 722 U/l, γGTP 358 U/l, PT 47%と黄疸, 肝機能異常, PT低下を認められ, 薬物性肝障害疑いで入院となった. 8月7日, PT 34%とさらに低下が認められ, 8月8日精査加療のため当科へ転院となった. 【入院後経過】入院時, T.Bil 19.3 mg/dl, AST 1706 U/l, ALT 2031 U/l, PT 29.8%と肝不全進行が認められたが, 意識は清明であった. 採血でIgG 2166 mg/dl, 抗核抗体80倍であり, 自己免疫性肝炎(AIH)も疑われ, ステロイドパルス療法を施行された. 入院2日目, 2度以上の脳症は認めなかったがNH3上昇を認め血漿交換と血液濾過透析を施行された. 肝酵素やPT, NH3は改善したが, 貧血や血小板低下, フェリチン高値を認め, 骨髄穿刺を施行したところ血球貪食像が認められた. リンパ腫などの原因は認めず, 自己免疫関連血球貪食症候群(AAHS)であると考えられた. 肝生検では中心静脈域を中心とした肝細胞壊死と門脈域の炎症細胞浸潤を認めた. 簡易版AIH診断基準が7点, DDW-J2004スコアは8点であり, 内服していたサプリメントがDLST陽性を示した. 以上から血球貪食症候群を合併した薬剤起因性AIHと考えられた. 肝機能, 血小板数は次第に改善したためプレドニゾロンを漸減し入院20日目に退院となった. 【まとめ】AAHSは自己免疫性疾患を基礎疾患として発症し, 臨床症状が比較的穏やかな傾向にあると考えられている, 薬剤起因性AIHに血球貪食症候群が合併した報告例はなく, 示唆に富む症例と考えられ文献的考察を加えて報告する. |