セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-58:

S-1単独療法が著効した多発肝転移を伴う膵腺房細胞癌の1例

演者 吉田 直樹(東北大学病院 消化器内科)
共同演者 菅野 敦(東北大学病院 消化器内科), 正宗 淳(東北大学病院 消化器内科), 本郷 星仁(東北大学病院 消化器内科), 中野 絵里子(東北大学病院 消化器内科), 滝川 哲也(東北大学病院 消化器内科), 三浦 晋(東北大学病院 消化器内科), 有賀 啓之(東北大学病院 消化器内科), 濱田 晋(東北大学病院 消化器内科), 菊田 和宏(東北大学病院 消化器内科), 粂 潔(東北大学病院 消化器内科), 廣田 衛久(東北大学病院 消化器内科), 上野 正道(NTT東日本東北病院消化器内科), 下瀬川 徹(東北大学病院 消化器内科)
抄録 【はじめに】膵腺房細胞癌は極めてまれであり、標準的化学療法は確立されていない。今回、S-1投与により著明に腫瘍が縮小した膵腺房細胞癌の1例を経験したので報告する。【症例】79歳、女性。身長150cm、体重36.9kg。【既往】2型糖尿病に対し内服加療中。【現病歴】心窩部痛と食思不振が出現し、平成24年2月前医を受診した。腹部造影CT検査にて膵尾部に4cm大の境界不明瞭な造影効果の乏しい腫瘤と、肝内に多発する腫瘤を指摘され、膵尾部癌多発肝転移疑いで精査加療目的に当科を紹介となった。【入院後経過】血液検査にてRBC 3.81×106/μl、Hb 10.4g/dl、T-bil 0.7mg/dl、AST 69IU、ALT 20IU、LDH 1179IU、ALP 478IU、γ-GTP 72IUと軽度の貧血と肝機能障害を認めた。また、CEA 2.4ng/ml、CA19-9 52.0U/ml、AFP 2.7ng/ml、リパーゼ2272U/l、アミラーゼ 20U/l、とCA19-9は軽度高値を示し、リパーゼが著増していた。超音波内視鏡(EUS)では、嚢胞変性を伴う充実性腫瘤として描出された。病理組織学的診断を得るため、膵尾部の腫瘤に対して超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診・組織診(EUS-FNA)を施行した。腫瘤は好酸性の細胞質を有し、比較的小型の類円形核を有する異型細胞が充実性に増殖していた。免疫組織学的検討では、AE1/AE3陽性、CD56陽性、chromogranin A陰性、synaptophysin陰性、β-catenin は細胞質・細胞膜に陽性、α1-antitrypsin陽性、α1-antichymotrypsin陽性であり、膵腺房細胞癌と診断した。多発肝転移を認めることから手術適応外と判断し、S-1 (100mg/日)の投与を開始した。半年後に施行した腹部造影CTでは原発巣、多発肝転移ともに著明に縮小、1年後の腹部造影CTでは原発巣はほぼ消失した。平成25年10月現在までS-1の投与を13クール継続しているが腫瘤の増大傾向を認めず、全身状態も良好である。【まとめ】S-1が著効した多発肝転移を伴う膵腺房細胞癌の1例を経験した。本症例では治療前の病理組織的診断にEUS-FNAが有効であった。膵腺房細胞癌の化学療法に関する文献的考察を加え、報告する。
索引用語 膵腺房細胞癌, S-1