共同演者 |
佐野 俊和(岩手県立中部病院 消化器内科), 千葉 宏文(岩手県立中部病院 消化器内科), 渡邊 崇(岩手県立中部病院 消化器内科), 伊藤 洋信(岩手県立中部病院 消化器内科), 高橋 秀一郎(岩手県立中部病院 消化器内科), 三上 恵美子(岩手県立中部病院 消化器内科), 三浦 達也(岩手県立中部病院 消化器内科), 海野 賢司(岩手県立中部病院 外科), 小西 康弘(岩手医科大学 分子診断病理学講座), 石田 和之(岩手医科大学 分子診断病理学講座) |
抄録 |
【症例】71歳女性【既往歴】34歳甲状腺腫手術、35歳重症筋無力症、44歳胸腺腫瘍摘出術(右横隔神経損傷し呼吸不全合併)、63歳右気胸、肺炎にて呼吸不全悪化し気管切開施行。【現病歴】1ヶ月前より発熱、腹部鈍痛、腹満感が出現した。近医にて感染性腸炎として抗生剤処方されていたが改善乏しく1週間前に前医入院、CTで腹部腫瘤認め精査加療目的に当科転院となった。【入院時現症】腹部:平坦、軟。左腹部に手拳大の腫瘤触知。弾性軟、可動性あり。同部位に圧痛認めた。【検査所見】WBC 19450/uL, Hb 9.6g/dL, PLT 24万/uL, CRP 9.62mg/dL, CA125 303.1U/mL。腹部造影CT検査:SMA左側に接し最大径8cmの造影効果のある腫瘍を認め、内部は充実成分と嚢胞様成分が混在し、嚢胞内にはairを認めた。腫瘍は小腸壁と連続性あり小腸穿破が疑われた。また近傍に膿瘍と思われる腫瘤も認めた。腹部超音波検査:最大径8cmの境界明瞭な腫瘤として認め、充実成分は低エコーを主とする索状のモザイクパターンであった。【経過】絶食管理としCTRX投与の上各種検査施行した。採血上炎症所見の改善が見られ、発熱・腹痛軽快したため第4病日より食事開始したが、症状の再燃は見られなかった。経過中貧血進行あり赤血球4単位輸血し、小腸GISTの術前診断にて外科転科の上第15病日に手術施行した。腫瘍は腸間膜を主座とし、小腸浸潤を認め小腸合併切除施行、剥離の際に白色無臭の液体流出あり膿瘍内容物と思われた。SMA背側への浸潤が見られ、この部位で腫瘍が一部残存し完全切除には至らなかった。病理組織は異型に乏しい紡錘型の腫瘍細胞が線維増生を伴い束状に増殖しており、小腸筋層へ浸潤していた。免疫染色:c-kit(-), CD34(-), SMA(-), S100(-), desmin(-), βcatenin(+), vimentin(+), ki-67<1%でありデスモイド腫瘍の診断となった。【結語】膿瘍形成により発症した腹腔内デスモイド腫瘍の1切除例を経験した。人口100万人あたり年間2.4~4.3例と報告される非常に稀な疾患であり、文献的考察を加えて報告する。 |