セッション情報 シンポジウム2「高齢者肝胆膵疾患に対する診療の工夫」

タイトル S2-12:

80歳以上の肝胆膵疾患を有する高齢者に対する外科治療後の長期予後

演者 工藤 大輔(弘前大学 大学院医学研究科 消化器外科学講座)
共同演者 豊木 嘉一(弘前大学 大学院医学研究科 消化器外科学講座), 石戸 圭之輔(弘前大学 大学院医学研究科 消化器外科学講座), 木村 憲央(弘前大学 大学院医学研究科 消化器外科学講座), 三浦 卓也(弘前大学 大学院医学研究科 消化器外科学講座), 中山 義人(弘前大学 大学院医学研究科 消化器外科学講座), 袴田 健一(弘前大学 大学院医学研究科 消化器外科学講座)
抄録 【緒言】平成24年の厚生労働省の統計によれば、80歳時点での日本人の平均余命は、男性で8.5年、女性で11.4年であり、高齢者に対する診療の機会は今後も増加が予想される。腹部消化器領域の中でも、比較的侵襲度が高いとされる肝胆膵疾患に対する外科的治療の妥当性を検証したい。【方法】2004年以降、肝胆膵疾患に対して当科で全身麻酔下に手術治療を受けた59例を対象として、長期的予後を検討した。【結果】良性疾患20例、悪性疾患39例に対して手術治療が行われた。良性疾患症例の内訳は、全例「胆道結石」であり、胆嚢摘出術が8例、胆管結石切石術が8例、胆管空腸吻合術が4例に対して行われていた。術後生存期間中央値は4.3年であり、5年生存率は55.6%であった。死亡原因の内訳は、「心血管系疾患」による死亡が5例、「新規の他癌」が1例であった。悪性疾患症例の内訳は、肝癌が4例、肝転移が7例、胆道癌が18例、膵癌が8例であった。根治的切除術は34例(87.2%)に対して行われ、「非切除」の原因は5例全例で「腹膜播種」であった。術式としては、肝葉切除が5例、肝部分切除が8例、肝外胆管切除が4例、拡大胆嚢切除が2例、膵頭十二指腸切除が8例、膵体尾部切除が7例に対して行われていた。生存期間中央値は3.7年であり、5年生存率は34.3%であった。死亡原因の内訳は、「原癌死」が16例、「脳梗塞」が2例であった。術前のパフォーマンスステータス(以下、PS)は全例で2以下であったのに対し、退院後、初めての外来受診時(手術からの中央値6週間)には、PS3以上の症例が19例(32.2%)へと増加していた。【考察】80歳以上の肝胆膵疾患を有する高齢者に対する全身麻酔手術後の生存期間は、良性および悪性疾患の双方で、我が国の平均と比較して短縮していた。一因として、手術治療がADLの低下を招くことが考えられた。現在、「栄養指導」や「服薬指導」などは管理加算が認められているが、これと同様に「身体機能維持指導」も行われる必要があると考えられた。
索引用語 高齢者, 予後