セッション情報 シンポジウム1「高齢者消化管癌診療の適正化と工夫」

タイトル S1-05:

高齢者消化管癌治療-根治性とQoL、外科医の立場から-

演者 木村 昭利(弘前大学 医学部 消化器外科)
共同演者 和嶋 直紀(弘前大学 医学部 消化器外科), 赤坂 治枝(弘前大学 医学部 消化器外科), 山名 大輔(弘前大学 医学部 消化器外科), 一戸 大地(弘前大学 医学部 消化器外科), 坂本 義之(弘前大学 医学部 消化器外科), 村田 暁彦(弘前大学 医学部 消化器外科), 袴田 健一(弘前大学 医学部 消化器外科)
抄録 日本外科学会総会第111回(2011年)の高齢者消化器癌発表演題は18題(消化管癌9題)、第112回(2012年)には41題(消化管癌33題)、第113回(2013年)165題(消化管癌109題)であり、日本消化器外科学会総会においても年々高齢者消化器癌発表演題は増加傾向にあり、高齢者癌治療のエビデンスが求められている。手術のリスク評価法としてE-PASS scoring systemが近年注目されており、当科においても消化管癌(胃、大腸癌)の術後早期合併症について同スコアを用いて評価を行い(2000年~10年、n=2030)、75- 84歳群よりも85- 歳群で有意に術前リスクスコア(PRS)(p=0.004)、総合リスクスコア(CRS)(p=0.018)が高く、癌遺残や短期予後の差はないものの、術後早期合併症(Grade III以上(JCOG術後合併症基準ver. 1.0)発生頻度はCRSが高くなるにつれて多くなる事が示された。合併症発生率を減少させるために手術侵襲スコア(SSS)を下げる事が重要であると報告し、対策として手術時間短縮、出血量低減や腹腔鏡の選択を提案した。食道癌においては、右開胸開腹食道亜全摘を行った103例(2007年~12年)で比較したところ、65- 74歳群よりも75- 歳群で有意にPRS(p=0.002)と高く、SSS、CRSは有意差を認めなかった。術後早期合併症GradeIIIb以上が75- 歳群で有意に多く(p=0.008)、また術後在院日数(27.3日: 36.8日)(p=0.030)、在院死(0例: 3例)(p=0.004)が有意に高かった。高齢者では耐術能の低下が認められ、より低侵襲な手術が求められる。そこで、2007年~12年の術前補助療法施行、cT4、他癌併存症例を除いたR0胃癌手術症例を対象に、開腹群と腹腔鏡群を比較した。胃全摘(TG)はD1+、幽門側胃切除(DG)はD2郭清までの症例とした。TG(開腹72例、腹腔鏡8例)、DG(開腹149例、腹腔鏡26例)共にPRSに差がなく、SSS(TG: p=0.000、DG: p=0.000)、CRS(TG: p=0.000、DG: p=0.000)が腹腔鏡群で有意に低かった。しかし、TG、DG共に2群間に術後早期合併症発生率、術後在院日数、在院死亡数などに有意差を認めなかった。そのため、SSS低減を目的とした腹腔鏡手術のみでは、手術侵襲を低下させることは難しいと考えられた。
索引用語 高齢者, 消化管癌