共同演者 |
三浦 雅人(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 玉川 空樹(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 油井 理恵子(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 洞口 愛(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 阿曽沼 祥(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 梅村 賢(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 飯岡 佳彦(みやぎ県南中核病院 消化器内科), 大沼 勝(みやぎ県南中核病院 消化器内科) |
抄録 |
【症例】64歳、男性【主訴】意識障害、肛門痛、排尿障害【既往歴】手術歴・輸血歴なし【現病歴】2013年2月食道静脈瘤破裂にて当科入院。緊急EVLにて止血後、EISとAPCによる治療を追加し3月に退院となったが、入院中の採血にてgenotype 2型、低ウィルス量(4.4LogIU/ml)のC型肝硬変であることと糖尿病であることが判明。糖尿病に関してはインスリン治療が開始となり、C型肝硬変に関しては本人の強い希望で2012年5月よりPEG-IFNα2a90μgの単独投与が開始となった。9月末ごろより肛門痛や排便困難・排尿障害などの症状が出現。10月中旬意識障害が出現し、当院救急外来受診。採血上著明な貧血と直腸診にて黒色便を認めた。また、アンモニアが高値であり、消化管出血が原因の肝性脳症の診断で当科入院。【入院時検査所成績】WBC11900/μl,RBC200万/μl,Hb6.1g/dl,Plt9.5万/μl,AST27U/l,ALT24U/l,ALP295U/l,LDH204U/l,γ-GTP43U/l,T-Bil0.63mg/dl,BUN18.2mg/dl,Cre0.59mg/dl,CRP1.39mg/dl,アンモニア220μg/dl【経過】肝性脳症に対してBCAA製剤投与、貧血に対しては輸血を行った。さらに何らかの感染症を疑い抗生剤投与を開始。入院時の腹部CTでは骨盤内に占拠する8cm大の隔壁を伴う腫瘤を認めた。後日、同病変に対し経会陰的に前立腺穿刺を行ったところ、排膿が認められ、前立腺膿瘍と診断した。【病理所見】高度の炎症を伴う前立腺組織であり好中球浸潤を主体とする炎症性細胞浸潤が認められた。悪性細胞は認めなかった。【培養結果】E.coli 3+【考察】IFNの副作用として頻度不明ではあるが前立腺炎が報告されている。急性前立腺炎の合併症として前立腺膿瘍があり、症状として排尿障害や会陰部痛などが知られているが、本症例でも、経会陰的ドレナージを施行後、肛門痛、排尿障害などの症状の改善が認められたことから、前立腺膿瘍による肛門痛及び排尿障害と考えられた。本邦においてC型慢性肝疾患に対してIFN治療中に前立腺膿瘍を合併した例は報告がなく、本疾患は敗血症の合併による死亡例も認めるため、重大な副作用として念頭におく必要があると考えられた。 |