共同演者 |
柿坂 啓介(岩手医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科分野 肝臓分野), 及川 寛太(岩手医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科分野 肝臓分野), 水谷 久太(岩手医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科分野 肝臓分野), 遠藤 啓(岩手医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科分野 肝臓分野), 片岡 晃二郎(岩手医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科分野 肝臓分野), 松本 主之(岩手医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科分野 消化管分野), 滝川 康裕(岩手医科大学内科学講座 消化器・肝臓内科分野 肝臓分野) |
抄録 |
【症例】55歳男性【既往歴】33歳:扁桃腺摘出,50歳:Behcet病,脾臓摘出,51歳:両鎖骨下静脈閉塞【現病歴】平成20年よりベーチェット病の診断でPSL 5 mgを内服していた.平成25年5月初旬に下顎腫脹を自覚し,歯科でう歯を加療した.5月29日から右季肋部痛あり,肝S3にCTで腫瘤を認めた.周囲に造影増強効果を伴い肝膿瘍の診断となり,CTRX・CLDMで治療し縮小傾向となった.しかし,6月27日頃から再度右季肋部痛が出現しCTで同部位に増大した膿瘍を認め7月22日に当科紹介となった.【身体所見】眼瞼結膜貧血なし,眼球結膜黄染なし,腹部平坦軟右上腹部皮膚に発赤・腫脹,水泡を形成し,圧痛あり.上肢・前胸部に静脈の怒張あり.【血液生化学検査】WBC 22140 /μl,CRP 22 mg/dl,肝胆道系酵素の軽度上昇を認めた.【画像所見】腹部造影CT:肝S3に27mm大,S4に8mm大の膿瘍を疑う辺縁に造影効果を伴う低吸収域を,膿瘍に接した腹壁の皮下組織の肥厚を認めた.【経過】第1病日に肝S3へ経皮経肝膿瘍ドレナージ,壊死した皮膚へデブリードマンを施行した.第5病日に解熱が得られ,第10病日には膿瘍が縮小傾向となり,第20病日に膿瘍ドレーンを抜去した.膿瘍内容および壊死皮膚からの擦過物の培養よりStreptococcus intermediusが検出された.残存したS4の小膿瘍に対して抗生剤内服を継続し,外来で経過観察の方針で第28病日に退院した.しかし,第90病日,発熱が出現しCTで肝右葉に90 mm大の新規病変を認め,経皮経肝膿瘍ドレナージを施行した.再びS. intermediusが検出され,抗菌薬投与下で現在加療中である.【考察】細菌性肝膿瘍の原因菌としてはグラム陰性桿菌が多く,感染経路としては経胆道感染が最多である.本症例では膿瘍穿刺液,皮膚潰瘍よりS. intermediusが検出された.1か月前のう歯治療の際に下顎の腫脹があり,歯性感染症から血行性に肝膿瘍を形成したと推定された.また,ベーチェット病のためにステロイドを内服しており健常人と比べ易感染性であったことが誘因と考えられた.【結語】ステロイド内服中に口腔内常在菌が起因菌の皮下膿瘍を伴った肝膿瘍を経験したので報告した. |