セッション情報 特別企画 初期研修医(卒後2年迄)

タイトル W1-05:

C型慢性肝炎に対するインターフェロン治療で著効したと推定された18年後に肝細胞癌破裂を発症した1例

演者 星 沙弥佳(八戸市立市民病院 消化器科)
共同演者 松田 泰徳(八戸市立市民病院 消化器科), 長澤 仁嗣(八戸市立市民病院 消化器科), 岩井 渉(八戸市立市民病院 消化器科), 佐藤 真広(八戸市立市民病院 消化器科), 沖 元二(八戸市立市民病院 消化器科), 前田 俊一(同 化学療法科), 赤坂 明日香(同 救命救急センター)
抄録 【症例】50才男性【飲酒歴】ビール1-2L/日×19-39才【現病歴】平成5年に当院でC型慢性肝炎に対してインターフェロン(IFN)療法を行いウィルス学的著効(sustained virological response, SVR)が得られ終診となった(但し、カルテ保存なく詳細は不明)。平成23年6月に右季肋部痛が出現し、近医より当院へ紹介となった。造影CTにて肝右葉に11cm大、肝S4に11mm大の早期濃染を示す占拠性病変と、骨盤腔内にCT値の高い腹水を認めた。肝細胞癌(HCC)破裂と診断し入院となった。【検査】HCV抗体 4.5S/CO(+-)、HCV-RNA(リアルタイムモニターPCR法) 未検出【経過】入院日に緊急肝動脈塞栓術(TAE)を行った。その後、8月に肝右葉切除(病理所見で肝繊維化なし)、12月と平成24年2月に肝S4のHCCに対してラジオ波焼灼術を行った。7月に実施したCTで肝S2に19mm大のHCCと両肺に多発する肺転移を指摘された。8月に肝S2のHCCに対してTAE、肺転移に対しては気管支動脈に動注療法(シスプラチン、マイトマイシン、エピルビシン)を行った。その後、テガフール・ウラシルの内服を開始した。平成25年3月に2回目の気管支動脈への動注療法を行ったが奏功せず、8月からソラフェニブを内服している。【考察】IFN療法でSVRが達成されると発癌リスクは有意に低下する。一方でSVR達成例でも肝癌の発生は報告されており、観察期間3.3-8.0年で0.9-4.2%と報告されている。SVR後10年以上経過した症例での発癌は我々が検索した範囲内では10例であった。SVR後の経過観察に関して明確な指針はないが、日本肝臓学会のC型肝炎治療ガイドラインではリスク因子(高齢、男性、繊維化進展、飲酒、肝脂肪化、インスリン抵抗性)に応じて5-10年はスクリーニングを行うべきであると推奨している。本症例は男性、飲酒がリスク因子として該当するが、SVR後18年も経過したのちの発癌であった。【結語】C型慢性肝炎患者ではSVR後であっても長期にわたる経過観察が必要である。
索引用語 C型肝炎, SVR