セッション情報 一般演題

タイトル O-49:

副腎出血を契機に発見された自己免疫性膵炎の1例

演者 伊藤 美保(山形大学 第二内科)
共同演者 牧野 直彦(山形大学 第二内科), 戸澤 智浩(山形大学 第二内科), 松田 暁子(山形大学 第二内科), 池田 祐之(山形大学 第二内科), 柿崎 泰明(山形大学 第二内科), 赤松 学(山形大学 第二内科), 上野 義之(山形大学 第二内科)
抄録 【症例】51歳男性。【主訴】腰背部痛。【現病歴】2013年3月に突然、背部正中から左側に強い疼痛が出現した。疼痛持続のため近医を受診、湿布を処方され経過観察となった。その後症状改善なく、4月同院を再診、鎮痛薬を処方され、症状の改善を認めた。しかしその際の腹部単純CTで副腎出血を指摘され、当院に紹介となった。【検査結果】血液検査では、膵アミラーゼ 1583 U/l、リパーゼ 1921 U/l、エラスターゼ 9173 ng/dlと上昇を認め、血清IgG4は656 mg/dlと高値であった。前医の腹部単純CTでは左副腎に類円形の腫瘤を認め、内部は高吸収であり副腎出血が疑われた。当院でのCTでは左副腎に長径約50mmの境界明瞭な嚢状腫瘤を認めるものの、前医CTで認められた内部の高吸収は消失していた。膵体尾部に腫大があり、早期から門脈相で辺縁に被膜様の低造影域を伴っていた。膵体部背側に約13mmの嚢胞性腫瘤あり、仮性嚢胞が疑われた。脾静脈は膵背側で高度狭窄し、脾腫を伴い、胃壁内や周囲に側副血行路の増生を認めた。MRIでは体尾部を主体に膵実質が腫大、辺縁にT2WI低信号、緩徐濃染を示す被膜状の構造を認め、臨床所見と併せ、自己免疫性膵炎の変化と考えられた。ERPでは膵頭体移行部から体部の主膵管の狭細像を認めた。以上、びまん性膵腫大、ERPでの膵管狭細像、高IgG4血症より自己免疫性膵炎(AIP)確診と診断した。【入院経過】入院後は急性膵炎に準じて、絶食・補液・蛋白分解酵素阻害薬投与を行い、AIPの確定診断後にプレドニゾロン30mgの経口投与を開始した。その後自覚症状の軽快と膵酵素の改善を認めた。【考察】医学中央雑誌およびPub Medで検索し得た限り、AIP症例で副腎出血を来した症例は報告されていない。今回の症例ではAIPによる膵炎の広がりにより、副腎領域まで周囲の血管の閉塞・狭窄を来しており、副腎出血の原因に関与している可能性が考えられた。【結語】副腎出血を契機に発見された自己免疫性膵炎を経験した。副腎出血、膵仮性嚢胞、脾腫など多彩な病態を合併しており、ステロイド加療後の変化を注意深く経過観察する必要がある。
索引用語 自己免疫性膵炎, 副腎出血