セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-13:

転移性肝腫瘍との鑑別に苦慮した、腎細胞癌および肺癌術後の限局性脂肪肝の1例

演者 善如寺 暖(山形市立病院済生館 消化器内科)
共同演者 黒木 実智雄(山形市立病院済生館 消化器内科), 沖田 啓(山形市立病院済生館 消化器内科), 須貝 彩子(山形市立病院済生館 消化器内科), 名木野 匡(山形市立病院済生館 消化器内科), 三浦 敦司(山形市立病院済生館 消化器内科), 平川 秀紀(山形市立病院済生館 消化器内科)
抄録 【症例】60歳代男性【主訴】特になし【既往歴】平成19年 左腎細胞癌(clear cell carcinoma, pT1bN0M0, StageI)平成21年 右上葉肺癌(squamous cell carcinoma, pT1N0M0, StageIA)【現病歴】腎細胞癌術後5年7カ月、肺癌術後4年6カ月での画像検査にて、多発肝腫瘤を指摘された。転移性肝腫瘍が疑われたため当科へ紹介となった。【検査所見】AST 33 IU, ALT 59 IU, FBS 120 mg/dl, HbA1c(NGSP) 6.6 %, T-Cho 275 mg/dl, HDL-Cho 60 mg/dl, TG 314 mg/dl, LDL-Cho 190 mg/dl, SCC 1.6 ng/ml, CYFRA ≦1.0 ng/ml, CEA 0.8 ng/ml, HBs Ag (-), HCV Ab (-)【画像所見】CT:肝内に多発する肝腫瘤および高度脂肪肝を認めた。MRI:CTで認めた腫瘤影に一致して、T1WI、T2WIで周囲よりもわずかに信号の低下を認めた。EOBダイナミック造影では、早期からごく淡い染まりを認めた。肝細胞機能相では正常肝実質とほぼ同程度に造影されており、同定困難となっていた。腫瘤内を門脈分枝が貫通している像を認めた。【経過】腹部超音波検査では高度脂肪肝のため腫瘤を描出できず、CTガイド下生検を施行。病理診断では大滴性脂肪化のみられる肝組織のみだった。翌月、再度CTガイド下生検を施行。病理診断は前回同様、大滴性脂肪沈着の目立つ肝細胞で、悪性所見は認められなかった。4ヶ月後のCTでは肝腫瘤影は不明瞭となり、また残存する腫瘤も楔状の形態をとり、限局性脂肪肝と考えられた。【考察】限局性脂肪肝は多発してみられることがあり、転移性肝腫瘍との鑑別に苦慮することがある。本症例は、腎細胞癌術後、肺癌術後に伴う、異所性還流異常による限局性脂肪肝と考えられた貴重な症例であり、若干の文献的考察を加えて報告する。
索引用語 限局性脂肪肝, 転移性肝腫瘍