セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W2-08:

急性胆嚢炎加療後に胆嚢仮性動脈瘤及び胆嚢十二指腸瘻による吐血をきたし,IVRとPTGBDによる加療で改善を得た一例

演者 沖田 啓(山形市立病院済生館 消化器内科)
共同演者 黒木 実智雄(山形市立病院済生館 消化器内科), 善如寺 暖(山形市立病院済生館 消化器内科), 須貝 彩子(山形市立病院済生館 消化器内科), 名木野 匡(山形市立病院済生館 消化器内科), 三浦 敦司(山形市立病院済生館 消化器内科), 平川 秀紀(山形市立病院済生館 消化器内科)
抄録 【症例】80歳代女性【主訴】腹痛,発熱【既往歴】心房細動,慢性心不全,脳梗塞後遺症【現病歴】2日続く腹痛,発熱のためにかかりつけ医の往診を受けたところ腹膜刺激症状を認めたため,当院へ救急搬送された.血液検査と造影CTにて胆石性胆嚢炎の診断であった.抗凝固薬内服中であったこと,慢性心不全や高齢であることから保存的加療の方針となり当科へ入院となった.【経過】絶食・補液・抗生剤による保存的加療にて改善を認め,第12病日に食事を開始した.食事開始直後から腹痛の訴えとともに吐下血をきたし,造影CTを施行したところ,胆嚢内に造影剤の血管外漏出像が疑われ,胆道内と腸管内に血液の貯留を伴っていた.胆嚢仮性動脈瘤からの出血による吐下血と考え,同日中に血管内治療(IVR)を施行.胆嚢動脈の分枝から造影剤の血管外漏出像を確認し,コイル塞栓術によって止血を得た.以後再出血なく経過し,食事再開できていたが,第31病日に再吐血をきたした.造影CTでは胆嚢炎を疑う所見を認めるものの出血源の特定には至らず,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,十二指腸球部と胆嚢の瘻孔を認めた.保存的加療のみでは瘻孔の閉鎖は長期間に及ぶと考えられ,経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)による減圧を行いつつ食事を開始した.瘻孔の閉鎖を確認してPTGBDチューブは抜去し,以後胆嚢炎,吐血の再発なく経過している.【考察】胆嚢十二指腸瘻,胆嚢動脈仮性瘤ともに,稀ではあるものの胆石症及び胆嚢炎において知られている合併症であるが,いずれも推奨される治療法は手術である.胆嚢十二指腸瘻における自然閉鎖例の報告もあるが,閉鎖確認までの期間は数ヶ月に及ぶことが多いとされている.本症例ではIVR,PTGBDという低侵襲の治療によって,比較的早期に食事を再開し,瘻孔の閉鎖まで確認することができた.貴重な症例と考えられ,報告する.
索引用語 胆嚢十二指腸瘻, 胆嚢動脈瘤