セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-51:

多発腫瘤形成を来した、自己免疫性膵炎(AIP)の1例

演者 間 浩正(太田西ノ内病院)
共同演者 今村 秀道(太田西ノ内病院), 草野 昌樹(太田西ノ内病院), 橋本 健明(太田西ノ内病院), 迎 慎二(太田西ノ内病院)
抄録 【症例】50歳代 男性
【現病歴】1ヶ月前より心窩部痛を自覚し、当院救急外来初診。心窩部に圧痛を認め、採血にてAMY ; 990 U/lと膵酵素上昇、腹部造影CTにて膵腫大を認めた。飲酒歴もあり、アルコール性の急性膵炎の診断にて精査加療目的に入院とした。
【入院後経過】絶食・点滴・蛋白分解酵素阻害薬投与にて入院管理とした。入院後膵酵素は改善傾向であったが、第9病日にAMY ; 417 U/lと再上昇傾向し、腹痛も継続していた。再度画像評価を行ったところ、MRCPでは、主膵管の拡張および膵頭部での途絶が認められ、腹部造影CTでは膵尾部、膵頭部腹側、膵頭部背側にそれぞれ約30mm大の辺縁不整、造影効果に乏しい類円形充実性腫瘤が認められた。血中IgG4は539 mg/dlと高値を認めた。AIPが疑われ、EUS-FNAを施行した。組織診では、線維化を認める間質細胞の集塊を認め、特染の結果CD138(+)の形質細胞、IgG4抗体による免疫染色ではIgG4陽性形質細胞を多数認めた。各腫瘤像で明らかな悪性所見は認めなかった。
 以上よりAIPの診断にてステロイドセミパルス療法を3日間投与開始、以後PSL 20mg/日より漸減開始とした。投与開始後よりAMY ; 76 U/lと著明な膵酵素改善を認め、経過良好にて第30病日にて退院となった。現在は外来フォローアップ中である。
【考察】2001年から2013年6月までの医学中央雑誌で「多発腫瘤」、「AIP」をキーワードで検索すると論文としては9例の報告があった。本症例では膵臓内に計3個の腫瘤形成を来しており珍しいと考えた。EUS-FNAは、膵癌の否定に関して有用性が高い。本症例においても膵臓に発生した腫瘤すべてに穿刺を行い、組織学的に悪性が否定することが可能であった。
 抄録提出後の画像フォローアップの所見を含め、文献的考察を加え発表する。
索引用語 自己免疫性膵炎, 多発腫瘤