セッション情報 一般演題

タイトル O-50:

IgG4陰性自己免疫性膵炎と考えられた一例

演者 鹿志村 純也(水戸済生会総合病院 消化器内科)
共同演者 中村 琢也(水戸済生会総合病院 消化器内科), 濱中 紳策(水戸済生会総合病院 消化器内科), 大川原 健(水戸済生会総合病院 消化器内科), 渡辺 孝治(水戸済生会総合病院 消化器内科), 柏村 浩(水戸済生会総合病院 消化器内科), 浅野 康治郎(水戸済生会総合病院 消化器内科), 仁平 武(水戸済生会総合病院 消化器内科)
抄録 【はじめに】自己免疫性膵炎(AIP)の多くは1型AIP=lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)でありIgG4関連疾患の膵臓病変と考えられている。しかし、稀にIgG4陰性の2型AIP=idiopathic duct-centric pancreatitis(IDCP)が報告されている。【症例】60歳、男性。主訴:腹部不快感。既往歴:40歳から高血圧にて加療中。アルコール歴:なし。現病歴:2011年11月から腹部不快感が出現し近医での採血でアミラーゼの軽度上昇を認めたので当院へ紹介となった。来院時現症:上腹部不快感はほぼ消失していた。血液検査:AMY 57、膵型AMY 38と正常だが、リパーゼ 113、エラスターゼ1 1372と上昇していた。また、糖尿病が急激に悪化していた。画像検査:USでは膵臓全体が低エコーで腫大していた。EUSでは膵臓全体が低エコーで腫大し網状の高エコーも見られた。CTでは造影効果の遅延性増強パターンとcapsule-like rimを認めた。MRIのDWIで全体に高信号を呈した。ERPでは瀰漫性膵管狭細像を認めた。以上の画像所見から自己免疫性膵炎を疑った。しかし、IgG 1449、IgG4 32.5、抗核抗体マイナス、リウマチ因子5未満とIgG4関連疾患は否定的であること、他臓器病変も認めないことから2型AIPの可能性を考えた。同意が得られないことから膵生検は施行出来なかった。ステロイド治療はプレドニン30mg/日から開始して2週毎に漸減した。治療により膵腫大は軽快し、糖尿病のコントロールも改善した。【考案】わが国でAIPの多くは1型のLPSPでありIgG4高値が診断上の大きな特徴となる。しかし、2型のIDCPは明らかな血清学的マーカーがないことから膵臓の組織学的検討が必要とされるが、針生検で得られる小さな組織で確診するのは困難と考えられている。本症例は膵腫大と瀰漫性膵管狭細像という典型的なAIPとしての画像所見を呈するにも拘わらず血清学的検査所見が全て陰性であった。しかし、ステロイド治療が有効であったことからAIP疑診と診断され、2型AIPの可能性が高いと考えた。今後、さらに症例が蓄積されてIgG4陰性AIPの病態が解明されることが期待される。
索引用語 自己免疫性膵炎, IgG4陰性