セッション情報 一般演題

タイトル O-63:

内視鏡的食道静脈瘤硬化療法における硬化剤注入量の術後の検査データおよび症状に与える影響についての検討

演者 菊地 亮介(JR仙台病院)
共同演者 猪股 芳文(JR仙台病院), 横山 大(JR仙台病院), 安倍 修(JR仙台病院), 内山 志保(JR仙台病院), 及川 圭介(及川医院)
抄録 【背景と目的】当院では、待機的食道静脈瘤治療として透視下EISを行っている。待機治療の際は、全例術前にEUSを用いて供血路の推定、食道壁貫通血管や噴門部拡張血管の評価を行い硬化剤のシャント流出や過量注入を防ぐ戦略を立てている。硬化剤(EO)は静脈瘤に対して血管内皮細胞障害による血栓化閉塞を狙った治療であり、過量投与は偶発症の原因因子と考えられているが、実際にEOの注入量とその影響に関して検討した報告は少ない。そこで今回我々は、EIS時のEOの注入量と治療後の検査データの関係および身体の症状におよぼす影響について検討した。【対象と方法】平成20年1月~25年7月までに、当院で治療を行った食道静脈瘤患者82例を対象とした。疾患の内訳はアルコール性肝硬変35例、C型肝硬変26例、B型肝硬変3例、PBC8例、NASH5例、AIH1例、原因不明4例であり男女比50:32、平均年齢66歳であった。腎機能不全、肝機能不全、緊急例においてすべてEVL治療のみで行った8例は除外した。上記対象者74例の170回に及ぶEIS治療における、EOの総量と血管内注入(intra)および血管外注入量(para)のそれぞれを体重換算した値と、術後の発熱、疼痛、CRP、LDHの相関関係について検討した。 【成績】EOのそれぞれの注入量と発熱、疼痛、CRPには有意差のある相関関係は認めなかったが、EO総量とLDH(p<0.0001 相関係数0.485)およびintra総量とLDH(p<0.0001 相関係数0.646)には有意差のある相関関係が認められた。EO総量のほとんどはintra総量で占められており、intraの総量とLDHの相関関係がEOの総量とLDHの相関関係に影響を与えたと考えられた。これは血管内皮細胞障害の観点から、血管内溶血によりLDHが上昇するという従来からの報告と矛盾しない結果であった。【結語】安全確実にEISを行うためにEUSによる術前の正確な血行動態の把握に加え、硬化剤の血管内注入量に注意した慎重な治療が改めて重要である。
索引用語 食道静脈瘤, LDH