セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル O-15:

多彩な所見を呈し診断に苦慮した薬物性肝障害の1例

演者 藤田 将史(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座)
共同演者 今泉 博道(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 林 学(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 岡井 研(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 菅野 有紀子(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 阿部 和道(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 高橋 敦史(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座), 大平 弘正(福島県立医科大学 消化器・リウマチ膠原病内科学講座)
抄録 【症例】16歳、男性【主訴】発熱、腹痛【既往歴】特記事項なし【現病歴】2013年9月に39℃の発熱を認め近医で内服薬(アセトアミノフェン、セフカペン、麻黄附子細辛湯、クラリスロマイシン)を処方されたが、数日後に腹痛、腹満感が出現し、当院救急外来で受診した。来院時に軽度の顔面紅潮、浮腫を認め、採血で肝障害(AST 1104 IU/L、ALT 1979 IU/L)、PT 39.2%、プロカルシトニン高値(9.43 ng/mL)が認められた。造影CTでは肝全体が不均一に造影され、門脈域の肥厚、多量の胸腹水が認められた。急性肝炎、重症感染症疑いで当科入院となった。採血でHAV、HBV、HCV陰性、CMV、EBV、VZV、HSV-1・2は未感染、抗核抗体等の自己抗体は陰性、培養検査(腹水、血液、便、尿)はいずれも陰性であった。被疑薬を全て中止し、強力ネオミノファーゲンC、抗生剤(セフメタゾール)、新鮮凍結血漿投与による加療開始後から肝機能、腹部症状の改善を認めた。入院6日目の造影CTでは胸腹水はほぼ消失し、肝臓全体の造影も均一となった。入院7日目に肝生検が施行され、中心静脈周囲のリンパ球、好酸球浸潤、肝細胞の好酸性変性が認められた。DLSTでアセトアミノフェンが陽性で、入院9日目に好酸球増多(31%、1450/μl)も認められたことから、アセトアミノフェンによる薬物性肝障害(DILI)と診断された(DDW-J 2004スコア 10点)。以後肝機能(AST 67 IU/L、ALT 201 IU/L)、PT 81.1%、好酸球 9%と改善したため、入院16日目に退院となった。しかし、その後再び好酸球増多となり外来受診した。入院時HHV-6 IgGの高値、HHV-6DNA陽性(3.6×10*2コピー/ml)が確認され、薬剤性過敏症症候群(DIHS)への移行も疑われたが、薬疹や肝機能増悪はなく、ステロイド投与も含め経過観察中である。【結語】本症例は経過からアセトアミノフェンによるDILIと診断されたが、入院時から強い腹痛や胸腹水がみられ、DIHSへの移行も疑われたことなど、DILIとしては非典型的であり診断に苦慮した。示唆に富む症例と思われ文献的考察も含めて報告する。
索引用語 薬物性肝障害, アセトアミノフェン