セッション情報 | シンポジウム2「高齢者肝胆膵疾患に対する診療の工夫」 |
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タイトル | S2-03:当科における高齢者への肝動注化学療法の現状と工夫 |
演者 | 菅野 有紀子(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科) |
共同演者 | 今泉 博道(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 林 学(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 岡井 研(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 阿部 和道(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 高橋 敦史(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科), 大平 弘正(福島県立医科大学 医学部 消化器・リウマチ膠原病内科) |
抄録 | 【目的】当科で肝細胞癌(HCC)に対し肝動注化学療法を施行した症例について、年齢による治療や偶発症の違い、工夫の現状について比較検討した。 【方法】対象は2010年1月から2013年6月までに当科でHCCに対し肝動注化学療法を施行された145例。75歳以上を高齢者群、75歳未満を非高齢者群として治療前検査成績(AST、ALT、TB、PLT、PT、Alb、Cre、GFR)、Child-Pughスコア、HCC進行度、JISスコア、造影剤使用量、入院期間、治療の内容、合併症、治療後の有害事象を比較した。また年齢の違いによる治療上の工夫の有無について検討した。 【結果】145症例の平均年齢70.6歳(38歳~88歳)、男性97例、女性48例。成因HCV90例、HBV19例、HBV+HCV2例、アルコール17例、NASH/NAFLD7例、うっ血肝1例、バッドキアリ症候群1例、PBC1例、AIH1例、不明6例。非高齢者群85例、高齢者群60例(80歳以上21例)。非高齢者群:高齢者群の検査成績はGFRのみ75.2±26ml/min/l:64.8±18.5 ml/min/l(p=0.003)と有意差を認めたが、Child-Pughスコア(Grade A/B/C) 46例/37例/2例:34例/24例/2例、HCC進行度(StageI/II/III/VA/VB) 4例/35例/32例/11例/3例:5例/26例/24例/2例/2例、JISスコア(0/1/2/3/4/5) 1例/23例/32例/23例/4例/2例:3例/15例/27例/11例/3例/0例、造影剤使用量、入院期間、動注薬剤白金製剤/白金製剤以外 69例/11例:48例/12例とそれぞれ有意差を認めなかった。高血圧が21例:22例と高齢者群に多くみられた(P=0.03)。高齢者群では術後食欲不振や尿量低下、胸腹水貯留、胃潰瘍、不穏などをより多く認めた。有害事象に対してはそれぞれ補液、利尿剤の調節、抗炎症(NSAIDs、少量ステロイド)で対応された。 【結語】高齢であっても肝疾患の背景や治療法などに違いはみられず肝機能やHCCの進行にあわせた治療が可能であった。また高齢者群では術前高血圧や腎障害の合併、術後の食欲不振や胸腹水貯留例が多くみられたが、術後の水分コントロール、抗炎症治療などで対応し非高齢群と同様の入院期間で加療が可能であった。 |
索引用語 | 肝動注化学療法, 高齢者 |