セッション情報 特別企画 後期研修医(卒後3-6年迄)

タイトル W2-09:

門脈腫瘍栓を形成した退形成膵管癌の1例

演者 今 孝志(山形県立中央病院 消化器内科)
共同演者 白幡 名香雄(山形県立中央病院 消化器内科), 佐藤 英之(山形県立中央病院 消化器内科), 小野里 祐介(山形県立中央病院 消化器内科), 原 倫代(山形県立中央病院 消化器内科), 川越 圭(山形県立中央病院 消化器内科), 藤嶋 昌一郎(山形県立中央病院 消化器内科), 鈴木 克典(山形県立中央病院 消化器内科), 武田 弘明(山形県立中央病院 消化器内科), 深瀬 和利(山形県立中央病院 消化器内科), 高橋 邦之(高橋胃腸科内科医院)
抄録 【はじめに】退形成膵管癌は膨張性進展により早期の脈管転移を来すと考えられている。今回、門脈腫瘍栓を形成した退形成膵管癌の1例を経験した。【症例】60歳代男性【主訴】心窩部痛、体重減少【既往歴】前立腺肥大症【家族歴】特記事項なし【現病歴】受診半年ほど前から食事量の低下あり、体重が減少。心窩部痛も出現したため、近医で上部消化管内視鏡検査を施行したが異常はなく、精査目的に当院紹介受診となった。【初診時血液検査】CA19-9 171.6IU/l【腹部CT】膵頭部に長径約40mmの辺縁不整、内部不均一な低吸収性の腫瘤があり、膵実質外浸潤、上腸間膜静脈~門脈にかけて約55mmに渡って腫瘍栓を認めた。【MRI】T1強調像で低信号、T2強調像で不均一な高信号を呈する腫瘤。MRCPでは腫瘍によって主膵管が狭窄し、腫瘍尾側の主膵管の拡張を認めた。【EUS】膵鉤部に径40×23mm大の辺縁不整な腫瘤、門脈内に腫瘍栓と考える高エコー結節を認めた。画像診断より手術不能局所進行膵癌と診断し、病理学的診断のためにEUS-FNAを施行した。【病理】多形性に富む異型細胞が孤立散在性に存在し、一部には破骨細胞様の多核巨細胞が混在してみられ、退形成膵管癌(破骨細胞型)と診断した。【経過】初診から3か月で腹部膨満感出現。CTで腫瘍の増大、多発肝転移、腹水の著明な貯留を認め、その後全身状態が悪化し初診から約4か月後に永眠された。【考察】退形成膵管癌は比較的稀な癌腫で、膵癌全体の0.16%を占めるといわれている。早期より脈管進展を来すことが知られており、予後は不良である。Pub Med、医中誌で検索すると退形成膵管癌で門脈腫瘍栓をきたした症例は4例みられた。退形成膵管癌では通常型膵管癌と同様のレジメで化学療法を行うことが多いが、今後、EUS-FNAにより退形成膵管癌と診断される症例が増えると考えられ、また有効な治療法が確立されると考えられる。【結語】門脈腫瘍栓を形成した退形成膵管癌の1例を経験した。膵癌において門脈腫瘍栓を形成することは稀であり、退形成膵管癌を鑑別疾患の1つとして念頭に置いて診察する必要がある。
索引用語 退形成膵管癌, 門脈腫瘍栓