セッション情報 シンポジウム1「高齢者消化管癌診療の適正化と工夫」

タイトル S1-08:

超高齢者に対する腹腔鏡下大腸手術の有用性の検討

演者 木村 聡元(岩手医科大学 外科)
共同演者 大塚 幸喜(岩手医科大学 外科), 箱崎 将規(岩手医科大学 外科), 松尾 鉄平(岩手医科大学 外科), 外舘 幸俊(岩手医科大学 外科), 藤井 仁志(岩手医科大学 外科), 八重樫 瑞典(岩手医科大学 外科), 吉田 雅一(岩手医科大学 外科), 加藤 久仁之(岩手医科大学 外科), 板橋 哲也(岩手医科大学 外科), 藤澤 健太郎(岩手医科大学 外科), 肥田 圭介(岩手医科大学 外科), 佐々木 章(岩手医科大学 外科), 若林 剛(岩手医科大学 外科)
抄録 <目的>一般的に高齢者は諸臓器機能が低下しており、多くの既往症を有していることから手術を施行する際にはハイリスク群と考えられている。近年、手術手技や麻酔法の進歩によりこのような患者に対する腹腔鏡下手術も増加傾向にあるが、術中の気腹や体位変換による呼吸・循環動態への影響が懸念される。そこで当教室では、腹腔鏡下大腸手術(LAC)に対する循環・呼吸への影響について検討したところ、肺コンプライアンスの低下は見られるが気腹終了後に速やかに回復するという結果を得、LACにおいて年齢に関する適応は設けず、積極的に施行しその有用性・安全性を示してきた。今回、超高齢者を対象に手術のリスクおよび成績をretrospectiveに評価し、LACの安全性と有用性を検討した。<対象・方法>1997年1月から2013年11月までに当科で大腸癌に対し施行したLAC:1301例中、85歳以上の超高齢者55名をH群、60-69歳の患者345名をM群と定義。手術および術後成績について比較検討。さらにH群に対しては予後調査および退院後のADLについて機能的自立度評価表(FMI)を用い調査を行い、腹腔鏡下手術の有用性を検討した。<結果>H群の平均年齢88.2歳(最高92歳)、基礎疾患は腎機能障害を17%、呼吸機能障害を8%、心血管系障害を18%、高血圧を46%、糖尿病を11%に認めた。M群の平均年齢64.7歳であった。術後合併症はH群で術後譫妄を4%、麻痺性腸閉塞を4%、創感染を3 %、M群では創感染を5%、麻痺性腸閉塞を5%、腸炎を2%、縫合不全を2%認めた。両群とも術死および在院死亡はなかった。術後の歩行開始日/排ガス日/経口摂取開始日はH群、M群ともに1/2/3日。術後在院日数中央値はH群/M群:10日(転院は8名)/7日であった。術前と比較し、術後ADLがFIMで10点以上の低下を認めた症例は10%であった。<まとめ>H群ではM群と比較し重篤な合併症は認めず、在院日数で有意差認めたが、その他の術後短期成績では有意差を認めなかった。また、退院後のADLの低下も少ないことから、超高齢者に対するLACの手術成績は良好で安全に施行可能であり、手術の侵襲度を考えると有用な手技であると考えられた。
索引用語 腹腔鏡手術, 大腸