共同演者 |
水口 徹(札幌医科大学 第1外科), 川本 雅樹(札幌医科大学 第1外科), 河野 豊(札幌医科大学 第4内科), 宮西 浩嗣(札幌医科大学 第4内科), 橋本 亜紀(札幌医科大学 第1外科), 今村 将史(札幌医科大学 第1外科), 木村 康利(札幌医科大学 第1外科), 古畑 智久(札幌医科大学 第1外科), 加藤 淳二(札幌医科大学 第4内科), 平田 公一(札幌医科大学 第1外科) |
抄録 |
【背景と目的】多結節癒合型の径10cmを超える巨大肝細胞癌では脈管侵襲を伴っていることが多く、術後の残肝再発が問題となることが多い。術前肝動注化学療法による局所制御後に肝切除を施行しえた症例を経験したので報告する。【症例】70歳、男性。【既往歴】52歳時より高血圧、63歳時より糖尿病【生活歴】飲酒・喫煙歴あり【現病歴】高血圧、糖尿病で近医通院中、2012年4月にエコーで肝腫瘍を指摘された。更なる精査加療目的に当院紹介となった。【入院時血液生化学検査】PLT=17.8万/μL, T.BIl =0.6mg/dL,ALB=4.4g/dL, PT%=89.3%, ICGR15=8%, HB sAb(+), HCVAb(-)【診断】肝右葉の巨大肝細胞癌(径16cm)、多結節癒合型、T4N0M0, Stage IVA【治療方針】画像上、脈管浸潤陽性の診断でStageIVAであったことから肝動注化学療法を施行した。【術前肝動注化学療法】5-FU+CDDP(4week/コース)(5FU: 300mg/m2, day1-5, day15-19)(CDDP: 65mg/m2, day2)(day8-14, day22-28は休薬)2012年5月から9月まで合計4コース施行された。【肝動注前後の変化】腫瘍径には変化を認めなかったが、腫瘍マーカーは減少し、他の新規病変を認めなかったので手術を考慮した。AFP (ng/mL)=515.4→153.0、PIVKA(mAU/mL)=2,502→512【手術所見】拡大肝右葉切除術、手術時間369分、出血量190ml【術後病理所見】H3, 多結節癒合型, St-AP, 16cm, Eg, Fc(+), Fc-Inf(-), Sf(+), S0, N0 ,Vp0, Vv0, Va0, B0, P0, SM(-), NL, F0, T3N0M0 Stage III【考察】巨大肝細胞癌で多結節癒合型の場合には脈管浸潤陽性の可能性が高く術後早期の残肝再発が危惧される。術前肝動注化学療法は残肝における新病変出現の有無を確認できるメリットとともに術後無再発生存期間の延長が期待されている。【結語】術前肝動注化学療法は巨大肝細胞癌に対する治療戦略のひとつとして有用であると思われた。 |