セッション情報 シンポジウム1「高齢者における消化管疾患の診断・治療の問題」

タイトル 079:

後期高齢者における腸閉塞診療の問題点

演者 鈴木 康秋(名寄市立総合病院 消化器内科)
共同演者 杉山 祥晃(名寄市立総合病院 消化器内科), 佐藤 龍(名寄市立総合病院 消化器内科)
抄録 【はじめに】高齢者の腸閉塞患者の診療においては、ADLの低下、脱水、抗血栓薬を要するような脳・心血管性疾患の合併、せん妄や認知症によるコンプライアンスの低下、嘔吐による誤嚥性肺炎、などが問題点として考えられる。今回我々は、75歳以上の後期高齢者におけるこれらの問題点を検討したので報告する。【対象】2012.4~11月に当科に入院し、イレウス管または胃管等の減圧チューブを挿入した腸閉塞患者19(癒着性15、大腸閉塞性2、絞扼性1、アニサキス1)例。75歳以上の後期高齢者(高齢者群)12例(77-97:平均85.1歳)と75歳未満(対照群)7例(41-74:平均61.0歳)に分け比較検討した。【検討項目】在院日数、定期外来・入院時血清BUN値、イレウス管挿入長、挿入所要時間、偶発症、イレウス管自己抜去、誤嚥性肺炎合併について検討した。なおイレウス管は全例経鼻内視鏡補助下で挿入した。【結果】1、手術症例を除いた在院日数は、高齢者群(16.4日)が対照群(14.3日)より2日間長かった。2、通常定期外来・入院時血清BUN値は、高齢者群(16.1, 26.0)、対照群(14.2, 18.2)で、BUN上昇率(入院時/通常時比)は高齢者群1.8、対照群1.3で高齢者群が高かった。3、イレウス管挿入長は高齢者群(182cm)、対照群(180cm)で差はなく、挿入所要時間は、高齢者群(22分)、対照群(44分)で高齢者群の方が短かった。抗血栓薬は高齢者群5例(42%)、対照群1例(14%)で内服していたが、両群とも出血などの偶発症は無かった。4、せん妄や認知症によるイレウス管自己抜去は、対照群は74歳の1例のみ(14%)であったが、高齢者群では6例(50%)に認め、挿入後平均3.9日後に抜去されていた。5、誤嚥性肺炎は、対照群は59歳の1例のみ(14%)であったが、高齢者群では7例(58%)に認めた。【結語】後期高齢者の腸閉塞診療では、イレウス管挿入の難易度や偶発症においては、非高齢者と比べ問題はないが、1)脱水をきたしやすい、2)せん妄や認知症によるコンプライアンスの低下(イレウス管自己抜去)、3)誤嚥性肺炎をきたしやすい、などが問題となる。
索引用語 腸閉塞, 高齢者