共同演者 |
清水 勇一(北海道大学 消化器内科), 大野 正芳(北海道大学 消化器内科), 大森 沙織(北海道大学 消化器内科), 鈴木 美櫻(北海道大学 消化器内科), 山本 純司(北海道大学 消化器内科), 森 康明(北海道大学 消化器内科), 小野 尚子(北海道大学病院 光学医療診療部), 中川 学(中川胃腸科), 間部 克裕(北海道大学病院 光学医療診療部), 中川 宗一(中川胃腸科), 工藤 俊彦(北海道大学 消化器内科), 加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部), 坂本 直哉(北海道大学 消化器内科) |
抄録 |
症例は50歳代男性.2011年初旬より嚥下時の頸部痛を自覚しており2012年2月に当院耳鼻咽喉科を受診,精査の結果下咽頭癌の診断となった.全身精査目的の上部消化管内視鏡検査(EGD)にて2/3周性の0-IIb+IIa病変を認めた.まずは下咽頭癌に対して放射線化学療法を施行する方針となり,同治療が終了した際のEGD再検で食道癌の残存を認めたため,精査加療目的に当科入院となった.EGDでは,切歯24~29cmに2/3周性の0-IIc+IIa病変を認め,腫瘍口側の一部が孤立性静脈瘤にかかっていた.NBI拡大観察では,IPCLは拡張および延長しており一部には無血管野を認めるものの,深部浸潤を示唆する異常所見は認めなかった.超音波内視鏡検査では深達度MM/SM1程度の診断であり,転移を疑うようなリンパ節腫大は認めなかった.以上の結果から,表層拡大型の早期食道癌と診断し,ESDの相対適応病変と判断されたためESDの方針となった.ヨード染色にて腫瘍の範囲を確認しマーキングをし,局注の上周囲切開を行った.病変を口側から,ITナイフnanoを用いて粘膜下層やや深層のレベルで剥離を進めていったところ,孤立性静脈瘤が病変とともに剥離された.その後も剥離を進めていき,大きな出血などの合併症もなく施行時間128分で一括切除,内視鏡的完全切除となった.術後経過は良好であったが,ESD後瘢痕狭窄をきたし,数回のバルーン拡張を要した.病理組織学的診断は,Ut, 55×39mm, Squamous cell carcinoma, pT1a-MM, pHMo, pVM0, INFa, lyo(D2-40), v0(E-Ma). であった. 今回我々は,孤立性静脈瘤上の表層拡大型食道癌に対してESDを施行した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する. |