セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 001:

急性食道粘膜病変(AEML)の発症背景についての検討

演者 巽 亮二(札幌東徳洲会病院 消化器センター)
共同演者 太田 智之(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 木村 圭介(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 網塚 久人(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 坂本 淳(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 好崎 浩司(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 七尾 恭子(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 松原 悠(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 芹川 真哉(札幌東徳洲会病院 消化器センター), 蘆田 知史(札幌東徳洲会病院 IBDセンター), 折井 史佳(札幌東徳洲会病院 IBDセンター), 前本 篤男(札幌東徳洲会病院 IBDセンター), 古川 滋(札幌東徳洲会病院 IBDセンター), 川内 宏仁(町立中標津病院 内科)
抄録 【背景と目的】以前から黒色食道、壊死性食道炎とされている食道病変の報告があるがいまだ確固たる原因はわかっていない。当院で経験したAEML発症患者の背景について調査したので報告する。【方法】2006年1月から2012年9月までに当院で経験した88例のAEMLを調査した。AEMLの定義は『急性発症で食道1/3以上の範囲に及ぶびまん性粘膜障害をきたしたもの』とした。【結果】88例の性別は男性63例(72%)、女性25例(28%)と男性に多く、平均年齢は68歳であった。基礎疾患を持つ症例は75例(85%)であり、精神疾患22例(26%)、脳・神経疾患17例(19%)、高血圧21例(24%)、糖尿病15例(17%)、心・血管疾患13例(15%)などが存在した。内服薬として、抗血栓薬の内服症例は15例(17%)、NSAIDsの内服症例は12例(14%)であった。発見契機となった主訴は黒色嘔吐32例(36%)、吐血27例(31%)、黒色便13例(15%)などであり、上部消化管出血を示唆する症状が多かった。また、発症前には23例(26%)で嘔吐をきたしていた。本症で入院を要した症例は86例(98%)であり、うち65例(79%)はAEML以外に加療を要する疾患を併発していた。入院加療が必要な併存疾患として多いものは、胃・十二指腸潰瘍11例(13%)、急性アルコール中毒11例(13%)、肺炎6例(7%)、外科術後6例(7%)などであった。内視鏡所見にて併存率が高いとされる食道裂孔ヘルニアの合併症例は56例(63%)であった。発症時の血清アルブミン(Alb)値と栄養学的予後指数(PNI)の平均は各々3.5g/dl、42であり、血清Alb値が3.5g/dl未満であった症例は39例(44%)、PNIが40未満の症例は39例(44%)であった。【結論】AEMLは高齢で基礎疾患を持つ患者に発症しやすい傾向にあり、入院加療を必要とする併存疾患が多いこと、また、血清Alb値やPNIが低値である低栄養状態を示唆する患者に発症しやすい傾向があることから、全身状態が不良である患者にきたしやすい疾患であることが考えられる。また、AEML発症例のうち食道裂孔ヘルニア合併例が多く、嘔吐症状が先行する例も存在することから食道粘膜への胃酸の影響も発症に関与していることが考えられた。
索引用語 急性食道粘膜病変, 壊死性食道炎