セッション情報 シンポジウム2「高齢者における肝胆膵疾患の診断・治療の問題」

タイトル S2-3:

超高齢者の肝細胞癌手術症例に関する検討

演者 柿坂 達彦(北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野I)
共同演者 神山 俊哉(北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野I), 横尾 英樹(北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野I), 若山 顕治(北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野I), 敦賀 陽介(北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野I), 蒲池 浩文(北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野I), 武冨 紹信(北海道大学大学院 医学研究科 消化器外科学分野I)
抄録 【背景】近年、平均寿命の延長、肝炎治療の進歩から、高齢発症の肝細胞癌が増加してきた。肝切除技術・周術期管理の向上からperformance status 0~2の80歳以上の超高齢者肝細胞癌症例に対しても手術治療を選択している。今回、超高齢者肝細胞癌手術症例に関して治療成績を検討した。【結果】2000~2010年の期間に当科で施行した初回肝細胞癌手術症例504例中、80歳以上の症例は19例であった。年齢は平均83.6±3.0歳(80-90歳)で、性別は男性13例、女性6例。背景肝疾患は非B型非C型症例が74%と80歳未満の症例より有意に多かった。Child-Pugh分類は全例A、腫瘍サイズは平均7.7±4.6cm(1.7~15.5cm)で有意に大きく、StageはI: 1例、II: 11例、III: 5例、IVA: 2例であった。当科では年齢に関係なく、肝機能による肝切除アルゴリズムによって切除範囲を決定している。切除範囲はHr0: 3例、HrS: 1例、Hr1: 5例、Hr2: 10例。手術時間、出血量、Clavien-Dindo分類IIIa以上の術後合併症は80歳未満の症例と有意差を認めなかった。平均観察期間は31.6ヵ月で、術後に12例(63.2%)が再発し、無再発生存期間の中央値は21.6ヵ月であった。初発再発部位は残肝 7例、肺 2例、肝肺 1例、骨 1例、肝肺骨 1例であった。超高齢者症例でも積極的に再発治療を行っている。残肝再発症例に対してはTACE 6例、局所療法を2例で施行した。単発肺転移症例に対してVATSを1例施行、副腎転移に対して副腎切除術を1例に施行した。また多発肺転移症例に対してsorafenibも含めた化学療法を施行した症例を1例経験している。5例が癌死し、2例が他病死した。【結語】80歳以上の超高齢者でも安全に肝切除を施行することが可能であった。また多くの症例で再発を認めるため再発時には部位・全身状態から適切な治療法を選択することで予後の改善を期待できると考えられた。
索引用語 高齢者, 肝細胞癌