セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 内W13-11:

当科における高齢者出血性胃十二指腸潰瘍の治療戦略

演者 高城 健(防衛医大病院・2内科)
共同演者 川口 淳(防衛医大病院・2内科DELIMITER防衛医大病院・光学医療診療部), 永尾 重昭(防衛医大病院・2内科DELIMITER防衛医大病院・光学医療診療部)
抄録 【背景と目的】高齢者の上部消化管出血において、胃十二指腸潰瘍は比較的多くみられる疾患であるが、その原因はH.pyloriのみならず、基礎疾患に対する抗血小板・抗凝固療法やNSAIDs・ステロイド等の投与に起因するものも少なくない。そのようなケースも含め、出血性胃十二指腸潰瘍に対する治療法は内視鏡的止血術が第一選択であるが、中には内視鏡的止血術が奏効しない症例もみられる。今回我々は、当院における内視鏡的止血術の成績を基に、高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍の最適な治療戦略について検討を行った。
【方法と対象】2005年1月から2012年2月までの間に当科で実施した緊急上部消化管内視鏡症例1013例のうち、胃十二指腸潰瘍483例を対象とし、処置内容や治療抵抗性などを検討した。対象の平均年齢は65.9±14.1歳であり、男女の内訳は男性が373例(77.2%)、女性が110例(22.8%)であった。また、149例(30.8%)が75歳以上の高齢者であり、137例(28.4%)が胃十二指腸潰瘍の危険因子となり得る薬剤を常用していた。
【結果】対象症例のうち347例(71.8%)で何らかの止血処置を要した。止血方法についてはクリッピングが197例(40.8%)と最も多く、以下はクリッピングとHSEの併用が54例(11.2%)、止血剤撒布のみが49例(10.1%)と続いた。それらの止血方法の選択割合に関しては、高齢者群と若年者群で有意差を認めなかった。止血を得るのに内視鏡治療を2回以上要した抵抗例が36例(7.4%)、IVRや手術を要した困難例が11例(2.3%)認められた。抵抗例は若年者群に、困難例は高齢者群に多く認められる印象があるものの、有意差は認めなかった。なお、上記薬剤の内服率は、高齢者群の方が有意に多かった(40.3% vs 23.0%(p<0.001))。
【結語】高齢者の出血性胃十二指腸潰瘍では、NSAIDs潰瘍のように薬剤が危険因子となるケースも多いが、初療時においては従来通り内視鏡的止血術が有効である。しかしながら治療に難渋する症例では、早期にIVRや外科手術などを考慮すべきである。
索引用語 上部消化管出血, NSAIDs潰瘍