セッション情報 一般演題

タイトル 113:

S状結腸憩室炎発症4年後に発見されたS状結腸小腸瘻の1例

演者 金野 陽高(琴似ロイヤル病院 消化器病センター)
共同演者 林 明宏(琴似ロイヤル病院 消化器病センター), 上野 敦盛(琴似ロイヤル病院 消化器病センター), 羽廣 敦也(琴似ロイヤル病院 消化器病センター), 本村 亘(琴似ロイヤル病院 消化器病センター), 丹野 誠志(琴似ロイヤル病院 消化器病センター)
抄録 症例は60歳代男性、9か月前からの腹部違和感を主訴に2012年7月当院を初診。CT上S状結腸に腫瘤形成を認め、大腸腫瘍の疑いで入院となった。2008年6月にS状結腸憩室炎の診断で他院に入院歴があった。大腸内視鏡検査上、S状結腸から小腸へ瘻孔を形成しており、内視鏡を小腸へ挿入可能であった。ガストログラフィン造影上もS状結腸から小腸への流出を確認した。また、S状結腸は浮腫状であったが明らかな腫瘍性病変は認めず、生検上も悪性所見を認めなかった。以上よりS状結腸憩室炎に伴う、S状結腸小腸瘻と診断し、手術治療を行った。手術所見はS状結腸とトライツ靭帯より40cm肛門側の空腸が一塊となり、後腹膜にまで炎症が波及しておりS状結腸小腸部分切除術を行った。病理上悪性所見は認めなかったが、S状結腸の憩室形成と一部漿膜まで及ぶ膿瘍形成を認め、憩室炎の波及による瘻孔形成と考えられた。憩室炎の治療として抗生剤の投与は一般的であるが,膿瘍、穿孔、腸管狭窄、瘻孔を伴う憩室炎などの治療は手術も選択肢として挙げられる。しかし、微小な穿通や抗生剤治療で軽快する膿瘍などでは保存的に加療されることが多い。自験例では憩室炎初発時、S状結腸周囲に膿瘍を形成したものの保存的治療により軽快し、発症2か月後に内視鏡を施行されていたが、わずかに狭窄は認めたものの瘻孔形成は確認されず、手術治療は行われなかった。保存的に軽快する症例でも瘻孔形成をきたす症例があると考えられ、慎重な経過観察が必要であると考えられた。また、S状結腸憩室炎に伴う瘻孔形成は広く知られているが、結腸小腸瘻は比較的まれであり、検索した範囲で5例のみであった。今回S状結腸憩室炎に伴うS状結腸小腸瘻の1例を経験したので文献的考察を含め報告する。
索引用語 S状結腸小腸ろう, S状結腸憩室炎