セッション情報 一般演題

タイトル 064:

Covered self-expandable metallic stent留置における内視鏡的乳頭切開術の必要性 -北海道内35施設による多施設共同無作為化比較試験-

演者 林 毅(札幌医科大学 第4内科)
共同演者 河上 洋(北海道大学 消化器内科), 小山内 学(手稲渓仁会病院 消化器病センター), 石渡 裕俊(札幌医科大学 第4内科), 成瀬  宏仁(市立函館病院 消化器内科), 久居 弘幸(伊達日赤病院 消化器科), 柳川 伸幸(旭川厚生病院 消化器科), 金戸 宏之(市立室蘭総合病院 消化器内科), 小泉 かずや(旭川医科大学 第3内科), 櫻井 環(製鉄記念病院 消化器内科)
抄録 【背景】一般に切除不能・中下部悪性狭窄に対する緩和処置として開存性の良さから金属ステント (SEMS) が留置されるが、膵管口閉塞による膵炎を予防する目的で内視鏡的乳頭切開術 (ES) が行われることが多い。一方、膵癌の多くは主膵管閉塞を来していることから膵炎発症は低頻度と考えられ、さらにES自体が膵炎の原因にもなり得ることからESなし(non-ES)でステント挿入しても良いとする考え方もある。しかしながらES附加の必要性に関する臨床研究は少なく、いまだ確立された手技とは言い難い。【目的と方法】切除不能膵癌でSEMS (Wallflex, Biliary RX Partially Covered Stent, Φ10mm, Boston Scientific Japan) 留置時のES付加の効果を検討するため2009年12月-2012年12月までに、北海道内の35施設で多施設共同無作為比較試験を実施した (UMIN 000004044)。【結果】ES群、non-ES群とも100例が割り付けられた。胆管挿管が不能であった4と2例を除外し、SEMS留置がなされた96と98例を解析した。手技時間は576.7±310.3と387.9±203.3秒であり有意にES群で長かった (p<0.001)。一方、膵炎 (9.4と8.2%)、出血 (1.0と0%) および穿孔 (0と1.0%) などの早期 (留置30日以内) 合併症率は15.6と15.3%で両群に有意差はなく、後期 (留置31日以降) 合併症率も2.1と3.1%で有意差はなかった。さらに、胆管炎再燃までの期間および全生存率の中央値は170.5と148日、242と202日でどちらも有意差はなかった。【結論】切除不能膵癌にSEMS留置を行う前処置としてESを付加することは合併症予防、ステント開存および予後延長に寄与せず、手技時間のみを延長させる。したがってESは不要な処置と考えられる。
索引用語 SEMS, EST