セッション情報 一般演題

タイトル 063:

シャント型肝性脳症に対し、短絡路温存門脈大循環分流術を施行した1例

演者 町田 卓郎(北海道消化器科病院 内科)
共同演者 堀田 彰一(北海道消化器科病院 内科), 木下 幸寿(北海道消化器科病院 内科), 藤澤 良樹(北海道消化器科病院 内科), 碇 修二(北海道消化器科病院 内科), 加藤 貴司(北海道消化器科病院 内科), 佐々木 清貴(北海道消化器科病院 内科), 山田 裕人(北海道消化器科病院 内科), 加賀谷 英俊(北海道消化器科病院 内科), 中村 英明(北海道消化器科病院 内科), 目黒 高志(北海道消化器科病院 内科)
抄録 <はじめに>肝性脳症は重篤な肝機能障害(肝不全)に伴って起きるものと、肝不全を伴わない慢性反復型に大別される。シャント型肝性脳症は後者に分類され、門脈圧亢進によって側副血行路(シャント)を形成した結果腸管から吸収された毒素が肝臓での代謝を受けずに大循環に流れ、脳症を引き起こす。今回、我々は、シャント型肝性脳症患者に対し、経門脈的に短絡路温存門脈大循環分流術を施行した1例を経験したので報告する。<症例>症例は74歳 女性。自己免疫性肝炎、肝硬変にて外来通院加療していた。平成23年夏ころより、肝性脳症を繰り返し入退院を繰り返していた。平成24年3月、意識混濁にて当院入院となった。採血にてアンモニアの上昇を認め、画像上、著明に発達した左胃静脈から食道周囲静脈へのシャントと、脾腎シャントを認め、シャント型肝性脳症と診断した。B-RTOによるシャント閉鎖術を検討したが、左胃静脈への側副路も肝性脳症の原因であると考えられたこと、また、急激な門脈圧亢進による腹水貯留、静脈瘤の形成が危惧されたため、十分なInformed Consentの上で門脈圧低下を目的に経動脈的部分的脾動脈塞栓術(PSE)と、その後に短絡路温存門脈大循環分流術(分流術)を施行した。まず、経動脈的にコイルを用いてPSEを施行。炎症の改善後に短絡路温存門脈大循環分流術を施行した。経皮経門脈的にアプローチし、まず、左胃静脈への側副路をコイル、5%EOIを用いて塞栓。その後、脾静脈を下腸間膜静脈より中枢でコイルを用いて閉塞し、脾静脈血を直接シャントを通じて大循環へ還流するように血行改変した。術後、アンモニアの軽度高値はあるが、意識障害は改善し、現在外来加療中である。<考察>短絡路温存門脈大循環分流術は1994年樫田らにより報告され、これまでに多数の施行例が報告されている。シャント型肝性脳症に対する短絡路温存門脈大循環分流術はシャント閉鎖術に比べ門脈圧の上昇が軽微であると考えられる。的確に症例を選択して施行することでシャント型肝性脳症に対する有効な治療法となりうると考えられた。
索引用語 短絡路温存門脈大循環分流術, 門脈圧亢進症