セッション情報 一般演題

タイトル 102:

原発性虫垂印環細胞癌の一例

演者 下田 瑞恵(遠軽厚生病院 内科)
共同演者 佐々木 貴弘(遠軽厚生病院 内科), 石川 千里(遠軽厚生病院 内科), 武藤 桃太郎(遠軽厚生病院 内科), 井上 充貴(遠軽厚生病院 内科), 高橋 裕之(遠軽厚生病院 外科), 萩原 正弘(遠軽厚生病院 外科), 青木 貴徳(遠軽厚生病院 外科), 橋本 道紀(遠軽厚生病院 外科), 稲葉 聡(遠軽厚生病院 外科), 矢吹 英彦(遠軽厚生病院 外科)
抄録 【症例】80歳代女性【現病歴】平成24年8月に便秘を主訴に当科外来を受診し、下部消化管内視鏡検査を施行したところ、虫垂開口部に径15mmの正常粘膜で立ち上がる内部に陥凹を伴った隆起性病変を認めた。陥凹面から生検を施行したところ、病理結果はsignet ring cell carcinomaであった。CT検査では虫垂の壁肥厚を認めたが、リンパ節転移、遠隔転移を疑う所見を認めなかった。大腸X線検査では虫垂が造影されず、盲腸底部に粘膜下腫瘍様の立ち上がりを呈する中心陥凹を伴った隆起性病変を認めた。超音波内視鏡検査ではMP層の断裂を疑う所見があり、深達度はSS以深と考えられた。上部消化管内視鏡検査、CT検査から他臓器に悪性を疑う病変を認めなかったため、虫垂原発印環細胞癌と診断し、9月に回盲部切除術を施行した。切除標本の病理組織学的所見は虫垂から一部盲腸にかけて、2型腫瘍を認め、同一病変内にsigを主としてmuc、tub2と多様な組織像を呈していた。深達度はSSでly3のリンパ管侵襲を認めたが、リンパ節転移は認めなかった。術後は補助療法としてUFT/UZELの内服を開始している。【考察】大腸癌の組織像のほとんどが高、中分化型腺癌であり、印環細胞癌の頻度は大腸癌全体の0.2-0.6%前後と報告されている。部位別では虫垂を原発とする大腸癌の頻度は切除大腸癌の0.5-1.4%と低く、本症例は稀な症例であると考えられた。本疾患の予後は極めて不良とされている。印環細胞癌は早期のうちは平坦、陥凹型を呈するが、多くは3ないし4型進行癌の形態で発見される。また、早期に粘膜下層へ浸潤しやすく、浸潤性増殖のために症状が出にくいとされている。虫垂は固有筋層が他の腸管と比較して脆弱であるため、癌が早期に筋層以深に浸潤しやすいという解剖学的特徴があり、これらが本疾患の予後が不良となる要因と考えられる。大腸での印環細胞癌の発生機序は明らかになっていないが、腺腫や分化型腺癌から印環細胞癌に変化する経路が指摘されており、本症例でも同様の発生経路の可能性が示唆された。同一病変内に印環細胞癌を含む多様な組織像を示した虫垂癌の一例を経験したので報告する。
索引用語 虫垂癌, 印環細胞癌