セッション情報 一般演題

タイトル 119:

エコー検査が有用でなかった潰瘍性大腸炎の一症例

演者 武藤 修一(苫小牧市立病院 消化器内科)
共同演者 宮本 秀一(苫小牧市立病院 消化器内科), 江藤 和範(苫小牧市立病院 消化器内科), 小西 康平(苫小牧市立病院 消化器内科)
抄録 近年,消化管エコー検査の有用性が認知されている.エコー検査だけでIBDを診断することは困難であるが,IBDの診断がつけば活動期では腸管の層構造の不明瞭化や浮腫性の肥厚と言う所見が,症状の改善とともに画像所見も改善する事から,簡便で低侵襲なエコー検査は非常に有用と考えられている.しかし,エコー所見では臨床所見を説明できず,従来の内視鏡でのみ,その活動性を確認しえた症例を経験したので報告する.症例は20代女性.10代後半から潰瘍性大腸炎,全大腸炎型を発症した.臨床的緩解を維持していたが,突然,腹痛と1日4行以上の血便,下痢を主訴に定期外受診をされた.当日,エコー検査を行うと上行結腸は水様便の貯留,横行結腸はガス像,下行結腸から直腸まで7mmの壁肥厚は見られる状態であったが,粘膜下層のエコーレベルの低下までは見られない所見であった.2日後,症状は改善を認めなかったが,エコー検査では大腸壁肥厚は消失していた.しかし,同日に行った内視鏡検査では全大腸において,びらん,発赤,浮腫,易出血性,膿汁の所見を認めた.Matts Grade3の所見で,病理結果ではMatts Grade3-4の所見を認めた.その後,治療にて症状は緩解したが,再増悪した際のエコー所見でも大腸の壁厚は肥厚しないにもかかわらず,内視鏡・病理所見は全大腸にMatts Grade3以上の所見を示していた.潰瘍性大腸炎の炎症の主座は主に粘膜であり,活動が激しいと粘膜下層まで炎症の波及が見られるが,症状が増悪しても,炎症が粘膜固有層内にのみとどまっている場合は,壁肥厚が見られない事が予想される.そのため,エコー検査で潰瘍性大腸炎の活動性を評価する場合,中等症以下の活動性であれば有用ではない症例が存在する.
索引用語 潰瘍性大腸炎, 腹部エコー