セッション情報 一般演題

タイトル 173:

DCS-T療法によりconversion therapyを施行し得た多発遠隔転移を伴うHER2陽性胃癌の1例

演者 奥田 敏徳(王子総合病院 消化器内科)
共同演者 土居 忠(王子総合病院 消化器内科), 松野 鉄平(王子総合病院 消化器内科), 石川 和真(王子総合病院 消化器内科), 植村 尚貴(王子総合病院 消化器内科), 南 伸弥(王子総合病院 消化器内科), 橋本 亜香利(王子総合病院 血液腫瘍内科), 藤見 章仁(王子総合病院 血液腫瘍内科), 蟹沢 祐司(王子総合病院 血液腫瘍内科), 京極 典憲(王子総合病院 外科), 石津 昭洋(王子総合病院 病理), 佐藤 康史(札幌医大 第4内科)
抄録 症例は71歳男性。2012年7月初め頃より上腹部痛を自覚し、当科受診。上部消化管内視鏡検査にて胃体下部から幽門部の小弯前壁側に3型腫瘍を認めた。生検にて中分化管状腺癌(tub2)、HER2陽性(IHC3+)と診断。CT検査では両肺野に小結節多発し、肝に多発する転移巣、胃周囲、大動脈周囲および左鎖骨上窩を含め多数のリンパ節腫大を認めcT4aN3M1(PUL,LYM)H1stageIVと診断した。治療は札幌医大第4内科の臨床試験「HER2陽性手術不能・再発胃癌を対象としたDocetaxel・Cisplatin・S-1・Trastuzumab(DCS-T)併用化学療法の認容試験」に登録し、全身化学療法を開始した。Grade2の口内炎および下痢による食欲低下、全身倦怠感を認めたが、重篤な副作用を認めず、治療の延期および抗癌剤の減量を行うことなく4コース施行した。CT検査による評価では、いずれの転移巣も縮小・消失しCRと判断、胃原発巣は縮小平定化しPRと判断した(ycT4aN0M0)。腫瘍マーカーCEA,CA19-9は正常化し、また同時期に施行したPET検査では有意な集積は認めず、胃原発巣からの生検材料からは腺癌の残存は認められなかった。今後の治療について話し合い、当初より胃切除の希望強く、胃切除および術後化学療法の継続の方針となった。2012年11月22日幽門側胃切除(D2郭清)を施行した。切除標本での病理学的検索にて主病巣にはtub2-por1相当の腺癌が散在性に観察され、最深部は漿膜下層であった。リンパ節は1個の転移が確認された(ypT3N1M0)。治療効果はがGrade2相当であった。DCS-T療法によりconversion 可能となった多発遠隔転移を伴った胃癌を経験した。1例の経験ではあるが、DCS-T療法は手術不能進行HER2陽性胃癌に対しconversionも念頭におくことができる治療法と考えられた。
索引用語 胃癌, DCS-T