セッション情報 一般演題

タイトル 128:

腹腔鏡が診断に有用であった結核性腹膜炎の一例

演者 鈴木 美櫻(北海道大学病院消化器内科)
共同演者 大野 正芳(北海道大学病院消化器内科), 大森 沙織(北海道大学病院消化器内科), 高橋 正和(北海道大学病院消化器内科), 森 康明(北海道大学病院消化器内科), 山本 純司(北海道大学病院消化器内科), 工藤 俊彦(北海道大学病院消化器内科), 清水 勇一(北海道大学病院消化器内科), 坂本 直哉(北海道大学病院消化器内科), 小野 尚子(北海道大学病院光学医療診療部), 間部 克裕(北海道大学病院光学医療診療部), 加藤 元嗣(北海道大学病院光学医療診療部), 中川 学(中川胃腸科), 中川 宗一(中川胃腸科), 木下 一郎(北海道大学腫瘍内科), 寺村 紘一(北海道大学病院 消化器外科II), 常松 泉(特定医療法人とこはる 東栄病院)
抄録  今回我々は、結核性腹膜炎の1例を経験したので報告する。
症例は70歳代男性。腹痛と微熱を主訴に当科を受診した。腹部に著明な膨隆を認めたため、CTを施行したところ、腹水貯留に加えびまん性の腹膜肥厚と多発する小結節性病変を指摘された。造影効果のある充実性の結節であり、悪性疾患を疑い全身精査を行った。しかし、上下部消化管内視鏡検査、PETにても原発巣は指摘しえず、腹水穿刺とエコー下大網経皮的針生検も施行したが、悪性所見は得られなかった。また、腹水細胞診や培養からも診断確定には至らなかったため、診断目的に腹腔鏡検査が施行された。腹膜全体に粟粒状に散在する小結節が観察され、結腸及び大網は腹壁と癒着していた。大網組織の病理診断にて、乾酪壊死を伴う類上皮細胞性肉芽腫を認め、結核性腹膜炎と診断された。血清ADAは76.1U/l、腹水ADAは81U/lと共に高値であったが、QuantiFERON、、腹水・腹膜・喀痰・便の結核菌塗抹・PCR検査はすべて陰性であった。また、胸部CTでは両側の胸膜肥厚と胸膜下の陳旧性変化のみであった。6ヶ月間の抗結核薬による加療により、症状は改善し、CT上腹水や腹膜結節も消失している。
結核性腹膜炎は、全結核患者の0.5%程度にみられる稀な病態であり、肺結核や腸結核に続発するものが多くを占める。結核性腹膜炎の診断に用いられる抗酸菌塗抹や培養検査、PCR検査の感度は低く、ツベルクリン反応やQuantiFERONの感度も60-70%程度と報告されている。一方、腹腔鏡下腹膜生検は組織学的証明が可能であり、診断にきわめて有用である。他臓器に結核病巣を認めない結核性腹膜炎は稀であるが、大網肥厚や結節性病変は特徴的な所見であり、本疾患も念頭に置くべきであると思われた。
索引用語 結核性腹膜炎, 腹腔鏡