セッション情報 シンポジウム1「高齢者における消化管疾患の診断・治療の問題」

タイトル S1-1:

当院における高齢者食道癌治療の現況 -主に化学放射線・放射線療法について-

演者 佐藤 康裕(国立病院機構 北海道がんセンター 消化器内科)
共同演者 大須賀 崇裕(国立病院機構 北海道がんセンター 消化器内科), 中村 とき子(国立病院機構 北海道がんセンター 消化器内科), 佐川 保(国立病院機構 北海道がんセンター 消化器内科), 藤川 幸司(国立病院機構 北海道がんセンター 消化器内科), 高橋 康雄(国立病院機構 北海道がんセンター 消化器内科)
抄録 【背景】高齢化社会において年齢とともに罹患率の上昇する食道癌の増加は必然であり、今後更なる増加が予想される。高齢者食道癌では臓器機能、併存疾患、治療意欲などの諸因子を考慮し、安全性と有効性のバランスをとった治療選択が求められ、暦年齢によってのみ治療を制限することは適切ではないと考えられる。【目的】高齢者食道癌の臨床的特徴を明らかにし、当院での高齢者食道癌治療の多くを占める(化学)放射線療法の安全性・効果・予後について検討する。【対象】2003年から2011年までに当院で診療した食道癌241例のうち、75歳以上の高齢者67例について解析した。【結果】年齢75-79歳が38例、80歳以上29例、男性56例・女性11例。併存疾患はHT 26例、IHD 5例、ASO 6例、不整脈7例、肺気腫4例、喘息3例、脳血管疾患8例、DM 9例、認知症2例。癌の既往は17例、同時性重複癌は4例に認めた。臨床病期は0/1/2/3/4期が2/10/11/27/17例であり、治療法は化学放射線療法(CRT)35例、放射線単独療法(RT)18例、手術6例、その他8例であった。病期別にCRT/RTはI期6/2例、II期7/3例、III期15/6例、IV期7/7例であった。CRT/RTのG3以上白血球減少43%/17%、好中球減少29%/6%、発熱性好中球減少3%/0%であった。CRTの途中中止は4例で、原因は食道炎が1例と瘻孔・穿孔が3例ありこのうち2例は在院死された。RTの途中中止はせん妄の1例のみであった。晩期毒性の肺臓炎による死亡例がCRT・RTともを1例ずつ認めた。病期別生存期間中央値はI/II/III/IV期61/14/17/5M、治療法別ではCRT/RT 17/7M、治療・病期別には病期II-III期のCRT/RT 15/11M、IV期のCRT/RT 7/5Mで有意差はなかった。【結語】 高齢者食道癌の多くが併存疾患を有し、手術リスクが高いことからCRT・RTが選択されることが多かった。血液毒性は認容可能と考えられるが、晩期毒性や穿孔・瘻孔には注意が必要である。予後はいずれの治療においても不良であり、必ずしも低侵襲ではないことから、症例ごとに緩和も含めた適切な治療選択が求められる。
索引用語 食道癌, 高齢者