セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 消W13-12:

高齢者の出血性消化性潰瘍に関する検討

演者 三長 孝輔(日赤和歌山医療センター・消化器内科)
共同演者 上野山 義人(日赤和歌山医療センター・消化器内科), 山下 幸孝(日赤和歌山医療センター・消化器内科)
抄録 【目的】当院は地域の基幹病院として高度救命救急センターを有しており、出血性潰瘍は遭遇頻度の高い疾患である。当科で入院加療を行った高齢者の消化性潰瘍症例につき検討した。【対象と方法】2004.5-2012.2の期間に当科入院となった高齢者上部消化管潰瘍501例を対象に、85歳以上の82例をA群、65歳以上85歳未満の419例をB群に分け検討した。検討項目は年齢、性別、潰瘍部位、止血成功率、止血術施行率、輸血率、Hb値、再出血率、死亡率、鎮静剤使用率、H.pylori(Hp)判定率、陽性率、除菌率、内服歴、入院期間、合併症である。【結果】A群/B群の平均年齢は88.7歳(85-98歳)/74.5歳(65-84歳)、男性比率が42.7%/64.7%(p<0.05)とA群で女性が多かった。胃潰瘍が86.6%/77.6%(N.S.)であった。全例で内視鏡検査を施行し、一次止血率は97.6%/99.5%(N.S.)であった。止血術施行率、輸血率は各々91.5%/82.1%(p<0.05)、86.6%/60.4%(p<0.05)とA群で高く、受診時Hb値(g/dl)は6.79/8.53とA群で低かった。止血法には多くは熱凝固法を選択、状況によりHSE法やクリップ法等を用いた。1年以内の再出血率は4.9%/6.9%(N.S.)、消化管出血が契機の死亡は4.9%/2.9%(N.S.)であった。鎮静剤使用率は84.1%/80.7%(N.S.)で重篤な合併症を認めなかった。Hp判定率、陽性率、除菌施行率は各々58.5%/85.4%(p<0.05)、66.7%/67.9%(N.S.)、75.0%/79.4%(N.S.)であり、A群では全身状態や併存疾患を考慮し未判定例が多かった。内服薬ではNSAIDs、aspirin、抗凝固・抗血小板剤内服率が各々32.9%/23.6%(N.S.)、19.5%/24.1%(N.S.)、24.4%/20.0%(N.S.)であった。入院期間は9日/8日(中央値)であり、合併症では誤嚥性肺炎を3.7%/2.6%(N.S.)、脳梗塞を4.9%/1.2%(p<0.05)に認めた。【結論】高齢者は心血管系疾患を有することが多く、抗凝固・抗血小板剤服用率が高く、潰瘍発生と重症化に関与していると思われる。特に超高齢者では高度貧血例が多く、脳梗塞等の重篤な合併症頻度も高く、輸血等によるバイタルサインの安定に加え速やかな止血処置が必要と考えられた。
索引用語 高齢者, 上部消化管出血