セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 112:膀胱壁膿瘍を合併したS状結腸憩室炎の1例 |
演者 | 櫻井 環(製鉄記念室蘭病院 消化器内科・血液腫瘍内科) |
共同演者 | 黒田 裕行(製鉄記念室蘭病院 消化器内科・血液腫瘍内科), 定免 渉(札幌医科大学 第4内科), 在原 洋平(札幌医科大学 第4内科), 平子 匡(製鉄記念室蘭病院 消化器内科・血液腫瘍内科), 安部 智之(製鉄記念室蘭病院 消化器内科・血液腫瘍内科), 山田 充子(製鉄記念室蘭病院 消化器内科・血液腫瘍内科), 藤井 重之(製鉄記念室蘭病院 消化器内科・血液腫瘍内科), 前田 征洋(製鉄記念室蘭病院 消化器内科・血液腫瘍内科), 早馬 聡(製鉄記念室蘭病院 外科), 前鼻 健志(製鉄記念室蘭病院 泌尿器科) |
抄録 | 症例は68歳男性。生来著患なし。2012年3月末より持続する微熱、下腹部鈍痛、便秘を主訴に4月下旬当科初診。腹部造影CTにて広範囲のS状結腸壁肥厚と隣接する膀胱壁の肥厚、膀胱壁内膿瘍を認め入院。下部消化管内視鏡検査ではS状結腸の内腔狭窄を認めるものの、粘膜面に腫瘍性病変や炎症所見はみられなかった。しかし可動性は悪く周囲に強固に癒着していた。膀胱鏡では後壁中心に壁外からの炎症によると考えられる浮腫状変化がみられるのみで膀胱腫瘍の所見はなし。膀胱・S状結腸いずれからの造影でも瘻孔は認めなかった。気尿や膿尿も認めなかった。S状結腸に微細な憩室が多発していたことから、S状結腸憩室炎の炎症が腸管壁に広範に及び内腔狭窄を来たし、かつ膀胱壁にも及び膿瘍を形成したものと考えられた。膀胱壁膿瘍が尿管口に近接していたため病変部切除は尿管損傷のリスクが高く、まずは絶食・抗生剤投与などの保存的治療を行った。膀胱膿瘍の縮小・炎症反応の低下・便秘の改善が得られたため、自然軽快を期待し外来で経過観察していたが、6月末から再び下腹部不快感が増強、排便困難となり、膀胱壁膿瘍の増大もみられたため、7月開腹手術を施行。術中所見ではS状結腸と膀胱が強固に癒着し、骨盤内の腹膜翻転部付近まで炎症の波及があり、腸管・直腸間膜ともに硬化していた。病変部の切除は困難と判断しS状結腸人工肛門造設にとどめた。その後は炎症の再燃無く、良好に経過している。 本症例は結腸膀胱間に瘻孔を形成しなかったため、当初保存的治療を選択したが、結局手術を余儀なくされた。治療法の選択に苦慮した1例であり、若干の文献的考察を交えて報告する。 |
索引用語 | S状結腸憩室炎, 膀胱膿瘍 |