セッション情報 シンポジウム1「高齢者における消化管疾患の診断・治療の問題」

タイトル S1-8:

高齢者大腸癌症例における、術前リスク評価の検討

演者 村上 武志(小樽掖済会病院 外科)
共同演者 佐々木 一晃(小樽掖済会病院 外科), 大野 敬祐(小樽掖済会病院 外科), 田山 誠(小樽掖済会病院 外科), 柴田 稔人(小樽掖済会病院 外科), 平田 公一(札幌医科大学 第一外科)
抄録 【はじめに】大腸癌罹患率の上昇、社会の高齢化に伴い、大腸癌手術における高齢者の割合は増加してきている。高齢者においては併存疾患の存在や、臓器・生理機能低下のため、術後合併症の発生リスクが高いと言われており、重篤な術後合併症を防ぐためにも術前リスク評価を行い、適切な術式を決定することが重要である。術前リスク評価として、諸家より様々な報告がされているが、小野寺らのPNIが簡便で信頼性も高いと言われている。【対象】2007年1月~2012年3月に当院で大腸癌手術を施行した患者のうちPNIの測定が可能であった445例を対象とした。平均年齢は71.3±9.9歳で、高齢者群(75歳以上)176例、非高齢者群(75歳未満)269例であった。腫瘍の占拠部位は、高齢者群で右側結腸が多く、非高齢者群で直腸が多かった。【方法】PNIを全例算出し、高・中・低リスク群に分類し、術式、合併症の発症を検討した。【結果】高齢者、非高齢者群とも腹腔鏡手術(51:88)、開腹手術(125:181)の頻度に差はなかった。高齢者群で結腸切除が多く(122:145)、非高齢者群で前方切除(37:100)が多かった。合併症発生は高齢者群で有意に高値(30.1%:20.8%)であった。高齢者群ではリスク間に合併症発生率(32.5%:37.2%:25.8%)に有意差はなかった。非高齢者群では高リスク群で合併症発生率(47.6%:7.5%:20.7%)が有意に高かった。【まとめ】高齢者群で合併症の発生率が高かったが、高齢者群といえども重篤な合併症の発現はなく、安全に手術可能であった。高齢者群においてはリスク間の合併症発生率に差はなかったが背景因子の違いもあり、さらなる検討を加えて報告する。
索引用語 高齢者大腸癌, 術前リスク評価