セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 194:

内視鏡的ネクロゼクトミーを回避して治療した感染性膵壊死の1例

演者 池田 裕貴(札幌医科大学 第四内科)
共同演者 林 毅(札幌医科大学 第四内科), 石渡 裕俊(札幌医科大学 第四内科), 小野 道洋(札幌医科大学 第四内科), 宮西 浩嗣(札幌医科大学 第四内科), 佐藤 勉(札幌医科大学 第四内科), 佐藤 康史(札幌医科大学 第四内科), 小船 雅義(札幌医科大学 第四内科), 瀧本 理修(札幌医科大学 第四内科), 加藤 淳二(札幌医科大学 第四内科)
抄録 症例は40歳代、男性。2011年5月に重症急性膵炎を発症し当院で保存的加療を受けた。被胞化された壊死組織が広範に残存したが、無症状のため経過観察の方針となった。7月に上腹部痛、発熱があり感染性膵壊死の疑いで再入院となる。造影CTで壊死組織内部に脾動脈および狭小化した門脈が貫通していたため、内視鏡的ネクロゼクトミー (EN) の実施は困難と判断した。EUSで同病変内にecho free spaceはなく、穿刺後の吸引で排液はなかったため壊死腔の洗浄による壊死組織の消化管への排出を行う方針とし、10mm径のWallFlexを (1) 胃体上部後壁、(2) 体中部後壁に留置し、ステント内に経鼻チューブを挿入し連日洗浄を行った。その後、症状、炎症反応およびCT所見から要治療部を想定しつつ、(3) 胃前庭部後壁、(4) 十二指腸球部、(5) 十二指腸下降脚から同様の処置を追加した。66病日には壊死巣は著名に縮小し、(1) はステントフリー、(2)-(5) は両端pig tail留置とし、80病日に食事を再開した。ところが、残渣の壊死組織腔への迷入による炎症再燃を生じたため、92、119病日に (5) と (3) へWallFlexを再挿入し洗浄を行った。133病日までに消炎と壊死腔の縮小が得られ、全てのステントを抜去した。瘻孔の閉鎖を待って149病日より食事を再開したところ再燃なく186病日に自宅退院となった。一方、9病日に炎症による下部胆管狭窄にて閉塞性黄疸を発症したが、十二指腸狭窄のため経乳頭的処置ができずPTGBDを施行した。58病日に経皮ルートを利用したランデブー法によるEBSを行った。その後十二指腸狭窄の改善を待って経乳頭的にステントの段階的な太径化を行い445病日にWallFlex 10mm径を留置した。515病日に同ステントを抜去した後は胆道もステントフリーである。エビデンスの集積と共に、ENが感染性膵壊死の代表的な治療になりつつあるが、重篤な合併症が多いため実施には慎重な判断を要する。本例で行った手技は、EN実施を躊躇する症例に対するひとつの治療選択肢になりうる。
索引用語 膵炎, 感染性膵壊死