セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 137:

腸管出血性大腸菌O-157腸炎14例の検討

演者 田中 一成(手稲)
共同演者 野村 昌史(手稲), 三井 慎也(手稲), 田沼 徳真(手稲), 村上 佳世(手稲), 浦出 伸治(手稲), 西園 雅代(手稲), 永井 一正(手稲), 松波 幸寿(手稲), 真口 宏介(手稲)
抄録 【背景】2012年夏、札幌市内において腸管出血性大腸菌(EHEC)O-157の集団感染事例が発生した。EHECは少量の菌で感染が成立し、ヒト‐ヒトの2次感染を容易に生じることから、感染症法で3類感染症に指定されている。また、EHECはVero毒素を産生し、出血性大腸炎だけではなく、ときに溶血性貧血、血小板減少、腎障害、意識障害、痙攣などを生じる溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの重篤な合併症を引き起こす。今回、2012年夏に経験したEHEC感染症14例について検討する。【対象と方法】2012年8月~9月にEHECの感染を確認した14例を対象に、(1)年齢(2)男女比(3)原因食物(4)住居(5)症状(6)抗菌薬使用の有無(7)画像所見(8)入院の有無(9)入院期間(10)合併症(11)転帰の11項目について検討した。【結果】(1)2~97歳(中央値 58.5歳)、(2)男性6例、女性8例(3)漬物5例、バーベキュー・焼肉5例、サラダ1例、不明3例(4)施設3例、自宅11例(5)血便12例、下痢12例、腹痛11例、嘔気・嘔吐 8例、発熱(37.5℃以上)3例(6)3例に使用したが(LVFX、CPFX、ABPC/SBT)、3例ともEHEC検出後に速やかに中止した。(7)CT、腹部超音波検査(US)を施行した全例(CT5例、US2例)に、上行結腸を中心とする右側結腸の著明な全周性壁肥厚(20mm以上)を認めた。大腸内視鏡検査は1例のみに施行し、左側結腸にEHECに特徴的とされる縦走性の出血性びらん、潰瘍がみられた。(8)入院9例、外来5例(9)5~57日(中央値 10日)(10)HUS、脳症等の重篤な合併症を4例に認め、2例は血漿交換を含めたICUでの集中治療を要した。(11)全例軽快し、死亡例はなかった。【まとめ】HUSを発症した重症例に対して、血漿交換を含めた集中治療を行い救命することができた。診断に際しては、右側結腸の20mm以上の壁肥厚が特徴的であるため、CTやUSなどの非侵襲的な検査でこの所見を捉える事が有用と思われた。
索引用語 腸管出血性大腸菌, 画像