セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 084:

腹腔鏡下胆嚢摘出術後に発症した特発性食道粘膜下血腫の一例

演者 石上 敬介(市立室蘭総合病院 消化器科)
共同演者 伊東 文子(市立室蘭総合病院 消化器科), 山本  至(市立室蘭総合病院 消化器科), 那須野 正尚(市立室蘭総合病院 消化器科), 中垣 卓(市立室蘭総合病院 消化器科), 佐藤 修司(市立室蘭総合病院 消化器科), 清水 晴夫(市立室蘭総合病院 消化器科), 金戸 宏行(市立室蘭総合病院 消化器科)
抄録 特発性食道粘膜下血腫は食道粘膜下層への出血により形成される血腫であり、1957年にWilliamsらが報告をして以来、本邦での報告も散見されるが、稀な疾患である。古川らによると、食道内圧上昇に伴う自己損傷や抗血小板薬・抗凝固薬内服など出血性素因を有する病態が原因となる特発性と、外傷や医療行為による機械的損傷が原因となる外傷性に分類され、吐血や胸痛などの症状で発症して緊急内視鏡検査で診断されることが多い。Mallory-Weiss症候群や食道静脈瘤破裂などが鑑別となるが、本疾患の出血は比較的少量で一時的なことが多く、保存的治療で改善する予後良好な疾患である。今回我々は、出血性素因をもたず腹腔鏡下胆嚢摘出術後に発症し、その治癒経過を内視鏡的に観察し得た特発性食道粘膜下血腫の一例を経験したため、文献的考察を含めて報告する。症例は77歳男性。抗血小板薬・抗凝固薬の内服や出血性素因となるような病態はなく、胆石症と慢性胃炎のため当科外来フォローしていた。2012年8月に総胆管結石のため当科入院となり、内視鏡的乳頭括約筋切開術および総胆管切石術を施行。その際には食道に異常所見は認めなかった。同年9月に単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し、手術当日の夜に吐血したため緊急上部消化管内視鏡検査を施行。胸部上部食道に横走する粘膜損傷をみとめ、同部位から食道胃接合部まで表面平滑な暗赤色の隆起性病変が連続していた。本症例は総胆管結石治療の際に食道粘膜に静脈瘤などの病変がないことも確認できており、また術後の絶食管理中であり外傷機転もないことから特発性食道粘膜下血腫と診断。絶食・補液・プロトンポンプ阻害薬投与による保存的治療を行い、食道粘膜が剥離し線状潰瘍を形成したものの狭窄をきたすことなく治癒が得られた。
索引用語 特発性食道粘膜下血腫, 吐血