セッション情報 一般演題

タイトル 088:

腹部エコー検査前に食事を摂ると検査できないのかについて.

演者 仲野 一平(苫小牧市立病院 消化器内科)
共同演者 宮本 秀一(苫小牧市立病院 消化器内科), 江藤 和範(苫小牧市立病院 消化器内科), 小西 康平(苫小牧市立病院 消化器内科), 武藤 修一(苫小牧市立病院 消化器内科)
抄録 【背景】腹部エコー検査は,ほとんどの病院で絶食にて行う事が多い.それは,食事に伴い空気が消化管の中に入り込み,消化管の背側臓器の観察に支障を来すという事や,食事の影響で胆嚢が収縮するために胆嚢内部を描出する事が困難になるという理由が一般的である.しかし,肝硬変などの患者にとって絶食は大きな体への負担になり,糖尿病でインスリン治療を行っている患者の治療の障害ともなる.【目的】食事前後における腹部エコー検査の描出能にどれほどの違いがあるかを明らかにすること.【方法】ボランティア9名(24歳から42歳,男性6名女性3名)に,同じ食事をとってもらい,食前,食後1時間,食後2時間における胆嚢,膵,総胆管,肝臓の描出能をそれぞれ3点満点で評価した.【検討項目】1) 体格差による描出能の差,2) 食前後における胆嚢収縮率,3) 食前後における各臓器の描出能【結果】1) BMI 23以下の群はBMI 24以上の群と比較して描出能が良い傾向がみられた(各臓器の描出能合計スコア 23.3 vs. 20.8, P = 0.046).特に,膵頭部,膵尾部,中下部胆管でその傾向が強くみられた.2) 胆嚢の大きさを長軸で測定すると,1時間後に89%,2時間後に86%となり,食前の胆嚢に比して有意( P = 0.01) に収縮していた.しかし,胆嚢内部の描出能に関しては食前,食後で大きな変化は見られなかった.3) 膵体部,胆嚢,上中部胆管,肝臓は食前も食後も描出能に差はみられなかった.膵頭部,膵尾部,中下部胆管は,食前よりも食後のほうが描出能の低下がみられた.【結語】エコー検査は,膵頭部,膵尾部,中下部胆管以外では摂食しても問題なく描出できる可能性が示唆された.しかし,最初の検査やスクリーニングに関しては,絶食による検査が望まれるものと考えられた.
索引用語 腹部超音波検査, 絶食