セッション情報 一般演題(専修医(卒後3-5年))

タイトル 004:

胃カルチノイド腫瘍と鑑別を要する早期胃底腺型胃癌症例

演者 山口 将功(札幌)
共同演者 黒河 聖(札幌), 伊藤 彰洋(札幌), 賀集 剛賢(札幌), 道上 篤(札幌), 西園 一郎(札幌), 寺門 洋平(札幌), 鈴木 肇(札幌), 乙黒 雄平(札幌), 菊池 仁(札幌), 西岡 均(札幌), 萩原 武(札幌), 前田 聡(札幌), 小澤 広(札幌), 今村 哲理(札幌), 岩口 佳史(札幌厚生病院 臨床病理), 市原  真(札幌厚生病院 臨床病理), 後藤田  裕子(札幌厚生病院 臨床病理), 村岡  俊二(札幌厚生病院 臨床病理)
抄録 胃底腺胃癌は,臨床的特徴として,発生部位は胃上部が多く,背景粘膜は萎縮や炎症のない胃底腺粘膜とされている.鑑別疾患としてはカルチノイド腫瘍が重要であり,生検で疑診されることもある.小型の病変でも高率にSM浸潤し,大きくなると陥凹型,表層方向へ増殖すると隆起型を呈するといわれている.病理学的特徴として,表層部は非腫瘍の腺窩上皮で覆われることが多く,主細胞のマーカーであるPepsinogen-Iが陽性となり,腫瘍径の小さいものでは細胞異型が低く,脈管浸潤陰性,低い増殖活性,p53蛋白過剰発現もなく悪性度は低いとされている.症例は70歳代,女性.前医で上部消化管のスクリーニング検査を施行され胃上部小弯に径5mmほどの粘膜下腫瘍病変を認め,生検施行.病理でカルチノイド腫瘍と診断され,当科紹介となる.前医の病理診断より精査にて単発性病変で高ガストリン血症もなく,腫瘍径から内視鏡的治療を優先させた.キャップを使用した内視鏡的粘膜切除術(EMRC法)にて病変部を一括切除し,病理結果は腫瘍径3mm,Adenocarcinoma of fundic gland type,pT1b1(SM1,200μm),ly(-),V(-),CE(-),免疫組織化学染色ではPepsinogen-I(+),MUC6(+),Synaptophysin(+),CD56(+),MUC5AC(-),Chromogranin A(-)と診断された.以上より八尾らの提唱している胃底腺型胃癌(主細胞優位型)と診断した.当院で経験したA型胃炎に伴う胃カルチノイド腫瘍と比較すると,多発病変か単発病変の相違,背景粘膜に萎縮や炎症の有無等で,早期の病変においては内視鏡診断が非常に難しいと思われる.また,病理診断も多くの免疫組織化学染色を施行する必要性もあり,診断に注意が必要である.今回,生検にてSynaptophysin,CD56が陽性となり胃カルチノイド腫瘍診断されたが,他の免疫組織化学染色を加え早期の胃底腺型胃癌と診断できた症例を経験した.現時点では全国的に症例数も少なく,今後,この新しいタイプの胃癌の臨床的意義を明確にすることをふまえ報告する.
索引用語 胃底腺胃癌, 胃カルチノイド腫瘍