抄録 |
(はじめに)近年,腹腔鏡下手術における手技は急速に進歩してきており,その一つとして従来よりも創の数を大きく減らしたReduced Port Surgery(RPS)が注目されている.胃癌に対する腹腔鏡下手術では通常5か所のポート挿入と胃を摘出,再建のため小開腹創を要するが,それらの創を2か所にまで減らした胃癌に対するRPSを2009年11月より施行してきたので,その手術の実際および成績を報告する.(方法)ヘソのマルチポートのほかに右側腹部の5mmポートを用いて手術を遂行している(Dual Port法: DP).また右側腹部の5mmポート創は最終的にドレーン挿入部として利用している.ヘソの創はヘソの範囲内でおさめているため創はほとんど目立たなくなる.適応は上腹部手術既往のない早期癌で郭清はD1+としている.術者はこれまでのところ1人に限定している.(結果)これまでに施行したDP-LADG(71例)と導入直前の通常のLADG(71例)と比較すると平均手術時間212.3分,202.0分,平均出血量34.5mL,55.0mL,ポート・小開腹追加が3例(癒着,出血,術中たこつぼ心筋症発症各1例),0例,開腹移行0例,0例,術後合併症0例,0例,平均リンパ節郭清個数34.0,32.8個と両群に差を認めなかった.これまでに施行したDP-LATG(15例)と導入前の通常のLATG(15例)を比較すると平均手術時間248.2分,242.3分,平均出血量40.6mL,111.4mL,ポート追加0例,0例,開腹移行0例,0例,術後合併症0例,0例,平均リンパ節郭清個数33.1,38.3個と両群に差を認めなかった.(結語)胃癌に対するReduced port surgeryが従来のLDGと遜色なく施行可能であった.今後は整容性以外のメリットの有無に関する検討を行いながらさらに症例を積んでいく予定である. |