セッション情報 ワークショップ13(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

高齢者上部消化管出血における止血治療戦略-静脈瘤を除く

タイトル 消W13-13:

当院の非静脈瘤性上部消化管出血における年齢による臨床像および経過の検討

演者 進士 明宏(諏訪赤十字病院・消化器科)
共同演者 武川 建二(諏訪赤十字病院・消化器科), 太田 裕志(諏訪赤十字病院・消化器科)
抄録 目的:非静脈瘤性上部消化管出血の緊急内視鏡検査につき、後期高齢者で特別な注意が必要かを検討する。方法:2006年11月1日から2011年12月31日まで上部消化管出血が疑われ当科で緊急内視鏡検査を行い、入院管理を行った非静脈瘤患者400例を対象とし、A群:75歳未満と、後期高齢者(B群):75歳以上の2群に分け、その臨床像をretrospectiveに検討した。χ2乗検定、もしくはMann-Whitney検定で、P<0.05を有意差ありとした。結果:A群:225例(M:F= 177/48)、B群:175例(M:F = 83/92)で、B群では女性の割合が高かった。検査時の鎮静剤使用率は、71.1%、68.0%、NSAIDs・抗凝固薬・抗血小板剤の服用率は、22.7%, 34.8%と有意差はなかった(P=0.50、P=0.07)。初診時のGlasgow-Blatchford score中央値は、10、11、Hb中央値(g/dl)は7.6、6.8と有意差があったが、輸血率は47.1%, 53.7%と差がなかった(P=0.19)。止血法は、クリップとエタノールが主で、有意差なく(P=0.35)、再出血率もA群5.6%、B群4.5%と変わらなかった(P=0.37)。一方、入院期間中央値はA群9日、B群12日と、B群で有意に延長を認めた。入院中に別疾患の合併を認めない割合は、A群70.2%に対し、B群49.7%と有意にB群で併発症の発生が高いことが原因と考えられた。うち、肺炎の合併はA群2.6%、B群10.2%、また、肺炎に限らず入院中抗菌剤投与を要した割合が、A群12.8%に対し、B群31.4%と有意に高かった。偽痛風や脳梗塞の発症には有意差は認めなかった。入院後の死亡割合は、A群は、出血死0%、他病死2.1%に対し、B群は出血死1.1%、他病死9.1%とB群では他病死の割合が有意に高かった。考按:後期高齢者では、併存症を来しやすく、肺炎の発症を抑えるためには鎮静剤の使用を極力控えることや予防的な抗菌剤投与を行うなど、若年者とは管理方法を変える必要があるかもしれない。結語:後期高齢者においては、止血に際し、併存疾患や処置後の合併症のリスクを考えて対応することが必要と思われる。
索引用語 非静脈瘤性上部消化管出血, 後期高齢者