セッション情報 一般演題

タイトル

インターフェロンβ治療により腹水の消失と低アルブミン血症の改善を認めたC型肝硬変の一例

演者 信岡 純(社会医療法人 鳩仁会 札幌中央病院)
共同演者
抄録 C型肝硬変患者に対するインターフェロンβ治療により、ウイルスの陰性化のみならず、腹水の消失、低アルブミン血症の改善を認めた1例を経験したので報告する。症例は64歳、男性。2006年よりC型肝硬変として外来通院していた。HCV RNAはgroup2、4.3logIU/mlであった。2010年末よりインターフェロン治療を予定していたが、2011年1月27日に腹水貯留による腹満にて入院。利尿剤の投与に加え、腹水穿刺、濾過濃縮再静注も数回施行し、やや減少傾向になるも改善には至らず。5月11日よりインターフェロンβ(フエロン)600万単位の連日投与を開始した。血小板数4.5 x 104 /μlに減少したため、5月16日より同単位を隔日投与に変更。しかし、血小板数3.8 x 104 /μlとさらに減少したため、一回投与量を300万単位に減量したところ、血小板数5.1 x 104 /μlと回復したため、5月30日に退院し、外来で治療を継続した。HCV RNAは治療開始1カ月で陰性化したが、その後腹満も自然に改善し、7月6日の腹部CTにて腹水の消失を確認した。血清アルブミン値も入院当初2.2 g/dlであったのが、インターフェロン治療開始2ヶ月で3.5 g/dlまで増加していた。現在もインターフェロンβ治療を継続しているが、腹水の再貯留を認めず、血清アルブミン値も4.1g/dlと正常範囲で経過している。C型肝硬変に対するインターフェロン療法は肝線維化進展の抑制、肝発癌予防において期待されている治療法であり、肝機能、予備能の改善なども報告されている。腹水に関しては、本邦でインターフェロンαにおいて2例の報告があるのみであり、インターフェロンβではこれまで報告をみない。C型肝硬変に対するインターフェロン療法は、肝炎と比較してSVR率が低いことや、血小板、白血球減少などの有害事象による出血、感染のリスクが危惧されるため、治療選択に慎重にならざるを得ないが、本症例のようにQOLの改善に寄与する可能性もあり、今後検討する価値のある治療法と考えられた。
索引用語 インターフェロンβ, 肝硬変