セッション情報 一般演題

タイトル

胃壁内転移を来たした胃癌の一例

演者 下田 瑞恵(JA北海道厚生連遠軽厚生病院 内科)
共同演者 堂腰 達也(JA北海道厚生連遠軽厚生病院 内科), 石川 千里(JA北海道厚生連遠軽厚生病院 内科), 武藤 桃太郎(JA北海道厚生連遠軽厚生病院 内科), 井上 充貴(JA北海道厚生連遠軽厚生病院 内科), 高橋 裕之(同院 外科), 萩原 正弘(同院 外科), 青木 貴徳(同院 外科), 橋本 道紀(同院 外科), 稲葉 聡(同院 外科), 矢吹 英彦(同院 外科)
抄録 【症例】70歳代女性【既往歴】糖尿病、高血圧【現病歴】平成25年4月に胃腫瘍精査目的に当院紹介となった。【経過】上部消化管内視鏡検査を施行し、胃体上部大弯に長径70mmの2型腫瘍を認めた。更にその近傍に長径40mmのSMT様病変を認めた。胃X線検査では胃体上部大弯に周堤を伴った潰瘍性病変とそれに隣接してSMT様の立ち上がりを呈する表面平滑な隆起性病変を認めた。2型腫瘍からの生検結果はtub1であった。SMT様病変は腹部超音波検査で病変の主座が固有筋層にあり、GIST等の間葉系腫瘍を第一に疑った。CT検査では肺、肝に多発転移性腫瘍を認めた。貧血予防、転移性腫瘍の原発巣検索目的に胃全摘術、胆嚢摘出術を施行した。術中、肝腫瘍の一部からと腹膜結節、大網結節から生検を施行した。 病理組織結果は、2型腫瘍部分はtub1>tub2のadenocarcinomaであった。SMT様病変は表層に正常な粘膜を有し、粘膜下層から筋層および漿膜層にかけてnoduleを形成し、tub1-tub2で2型腫瘍部分と同様の組織像であった。両者は近接するも連続性が確認できず、2型胃癌を原発とし、SMT様病変は胃癌壁内転移の診断となった。肝腫瘍、腹膜、大網からの生検結果もすべてtub1-tub2 adenocarcinomaの診断で転移性腫瘍の結果であった。【考察】胃癌の胃壁内転移は胃の粘膜下層や漿膜下層の豊富なリンパ管網を経路として、原発巣と離れた粘膜下や漿膜下に転移巣を形成することにより生じると言われている。胃癌壁内転移に関する報告は少なく、以前より多発癌との鑑別の際に論じられているが、明確な定義は存在していない。一般的に壁内転移とする判定は、同じ病理組織像を有し、各々に連続性がなく、脈管侵襲が著しく、また肉眼的にSMT様に隆起したものとされる。比較的稀と考えられる胃癌壁内転移の症例を経験したので、報告する。
索引用語 胃壁内転移, 胃癌