セッション情報 一般演題(研修医(卒後2年迄))

タイトル

出血を繰り返した重複腸管内翻症の1例

演者 伊藤 憲(北海道大学病院 消化器内科)
共同演者 大野 正芳(北海道大学病院 消化器内科), 鈴木 美櫻(北海道大学病院 消化器内科), 大森 沙織(北海道大学病院 消化器内科), 高橋 正和(北海道大学病院 消化器内科), 吉田 武史(北海道大学病院 消化器内科), 森 泰明(北海道大学病院 消化器内科), 中川 学(中川胃腸科), 小野 尚子(北海道大学病院 光学医療診療部), 中川 宗一(中川胃腸科), 間部 克裕(北海道大学病院 光学医療診療部), 加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部), 坂本 直哉(北海道大学病院 消化器内科)
抄録 症例は60歳代男性.下咽頭癌のため当院耳鼻咽喉科followとなっていた.H24年12月に血便によるショックのため近医に救急搬送,緊急で施行された上部消化管内視鏡検査(EGD)および下部消化管内視鏡検査(CS)では出血源は認めなかった.著明な貧血に対して輸血・輸液が施行され,全身状態が安定したため翌日当院転院となった.当院で施行した腹部造影CT検査では,骨盤内小腸内腔に管腔状構造を認め,内翻したメッケル憩室の存在が疑われた.その後も繰り返す消化管出血を認めたためカプセル内視鏡を施行したところ,下部小腸が出血源と同定された.引き続き径肛門ダブルバルーン小腸内視鏡で,短縮操作にてバウヒン弁から40cmの部位に,コアグラの付着を伴う隆起性病変を認めた.観察中に同病変から動脈性の出血を認めたが出血点は確認できず,自然止血されたため検査を終了した.諸検査の結果から内翻した出血性メッケル憩室と診断し,後日臨時外科手術を施行した.切除標本では,回盲部から75cm口側,腸間膜付着側近傍に,内腔に突出する3cm大の隆起性病変を認めた.病理組織所見では,びらんおよび炎症性肉芽組織を伴うinverted polypの診断であった.以上の結果から,本症例は内翻した重複腸管からの出血であったと考えられた.術後は下血を認めることはなかった.重複腸管は回腸・回盲部に多く,多彩な症状を呈するために術前診断は難しいといわれている.メッケル憩室との鑑別が困難な場合もあるが,本症例では病変が腸間膜付着側近傍であったことから,腸間膜付着対側に存在するメッケル憩室ではなく重複腸管の内翻であったと診断した.今回我々は,出血源検索にカプセル内視鏡・ダブルバルーン小腸内視鏡が有用であった重複腸管内翻症の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
索引用語 重複腸管, 消化管出血