セッション情報 シンポジウム1 「消化管疾患における画像診断の進歩」

タイトル

血便症例における体外式超音波検査

演者 西田 睦(北海道大学病院 検査・輸血部)
共同演者 間部 克裕(北海道大学病院 光学医療診療部), 桂田 武彦(北海道大学病院 消化器内科), 畑中 佳奈子(北海道大学病院 病理部), 三橋 智子(北海道大学病院 病理部), 加藤 元嗣(北海道大学病院 光学医療診療部), 清水 力(北海道大学病院 検査・輸血部)
抄録 体外式超音波検査(US)は多くの消化管疾患に用いられるようになってきている。また、最近の放射線被曝に対する患者意識の高まりからもより低侵襲な検査が望まれている。今回はUSが血便症例に対してどのように適応可能かを当施設の現況を中心に報告する。血便を呈する疾患はキャンピロバクター腸炎、O-157などの細菌性腸炎、薬剤起因性腸炎、憩室出血、潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病などの炎症性腸疾患、虚血性腸炎(IC)、小腸・大腸癌、SMTなどの腫瘍性病変と多岐に及ぶ。血便症例に対し、どの画像診断を最初に選択するかはコンセンサスが得られていない。CTでは被曝や造影剤の問題が考慮され、内視鏡ではO-157などの感染症では感染管理の観点からできるだけ避けることが望まれる。USは簡便無侵襲に検査施行可能であるため、ある程度の疾患推定を行い、次に選択される検査法、治療法の選択を行うことが可能となる。USで消化管の各固定点を基点とした系統的走査を行うことで病変の存在診断、部位の同定を行う。次に層構造の観察により特徴的な所見をとらえる。細菌性腸炎では層構造が比較的温存された右半結腸の肥厚、憩室炎では憩室のエコーレベル低下、肥厚、周辺脂肪織の肥厚など、UCでは直腸から連続する比較的層構造の温存されたm~sm層中心のびまん性の肥厚、ICでは左半結腸のsm層のエコーレベルが低下し、層構造の不明瞭化した中等度以上の壁肥厚、大腸癌では限局的な内腔面の不整な肥厚をとらえる。この方法で、感染性腸炎正診率83.6%(112/134例)、憩室炎正診率炎82.6%(19/23)と報告され、自験例ではUC例の内視鏡との一致率0.71(15例96部位)、IC正診率90.9%(100/110例)、大腸癌存在診断率88.0%(22/25例) 、SMT存在診断率89.7%(52/58例)であった。血便症例にてUSを最初に選択することで、ある程度の疾患の篩い分けをすることが可能で、侵襲的な検査を低減させることができると考えられる。
索引用語 超音波検査, 血便