セッション情報 一般演題

タイトル

当科で施行した脳死膵/膵腎移植6例の検討

演者 腰塚 靖之(北海道大学 消化器外科I)
共同演者 加藤 紘一(北海道大学 消化器外科I), 深作 慶友(北海道大学 消化器外科I), 高橋 徹(北海道大学 消化器外科I), 後藤 了一(北海道大学 消化器外科I), 青柳 武史(北海道大学 消化器外科I), 山下 健一郎(北海道大学 消化器外科I), 嶋村 剛(北海道大学 消化器外科I), 武冨 紹信(北海道大学 消化器外科I), 堀田 記世彦(北海道大学 泌尿器科), 森田 研(北海道大学 泌尿器科), 近藤 琢磨(北海道大学 内科II)
抄録 【背景、目的】重症の1型糖尿病(T1DM)は、頻回の自己血糖測定や厳格な食事コントロール、インスリン療法によりQOLが著しく損なわれる。更に腎不全の合併や無自覚低血糖発作、自律神経障害による突然死の危機もみられる。その根治的治療として膵および膵腎同時移植が勧められている。当科では2005年10月14日に第1例目の脳死膵腎同時移植(SPK)を施行して以来、現在までにSPK4例、腎移植後膵移植(PAK)2例を施行しており、移植成績、有用性につき検討した。
【結果】SPKの4例は全例が維持透析中であった。年齢中央値は43歳、待機期間中央値は736日(最短518日)であった。膵液は全例小腸ドレナージとした。1例は生体腎移植後の感染により移植腎を摘出した既往があり、脳死膵腎グラフトを同側(右腸骨窩)に移植した。移植後フォロー期間中央値は1497日で、いずれも拒絶反応は認めず、全例インスリンと透析の離脱を維持している。PAKの2例は生体腎移植後のT1DM患者で、年齢は41歳、45歳、腎移植後膵移植までの待機期間は2483日、1892日であった。移植膵は2例とも膀胱ドレナージとした。フォロー期間は430日、277日で、2例とも膵移植後ただちにインスリン離脱となったが、1例は移植後4ヶ月目に生じた拒絶反応によりグラフト機能が廃絶し、インスリン再導入となった。2例とも拒絶反応のモニタリングに尿中アミラーゼの測定が有用であった。
【考察】移植後6例中5例でインスリン離脱し、腎症や網膜症、神経障害の改善に寄与すると考えられた。脳死膵/膵腎移植はHLAマッチングが待機日数に優先するため、登録後早期に臓器分配が得られる症例もあった。SPKは導入免疫抑制療法への暴露が1回で、移植腎が高血糖にさらされず,腎臓で拒絶反応をモニターできることなどから、一般にPAKより移植成績が良好である。
【結語】脳死膵/膵腎移植は移植成績も良好であり、T1DMの根治治療として有用であると考えられた。
索引用語 糖尿病, 移植