セッション情報 一般演題

タイトル

アルゴンプラズマ凝固療法 ( APC ) により胃穿孔を認めた一症例

演者 武藤 修一(北海道医療センター)
共同演者 馬場 麗(北海道医療センター), 渡邊 修平(北海道医療センター), 田中 道寛(北海道医療センター), 中原 生哉(北海道医療センター), 木村 宗士(北海道医療センター), 大原 行雄(北海道医療センター)
抄録 活動性消化管出血に対するAPCによる止血術や血管拡張症・食道静脈瘤の地固めなど予防的止血術は非常に安全であるとされている.今回,肝硬変患者に対する胃の血管拡張に対してAPCによる止血術を行い,その後穿孔し,死亡した症例を経験したので報告する.症例は80代男性.虚血性心疾患・うっ血性心不全,慢性心房細動,CKD(stage3a-4) ,腎性貧血と言う既往歴がある.胃や大腸の消化管出血を繰り返し,心不全になるという悪循環を繰り返していた.今回も心不全にて入院.顕性出血は見られなかったが,貧血が頻繁に見られ,輸血を繰り返すこととなり,消化管出血を疑い当科紹介となる.nonBnonCの肝硬変であり,内視鏡で胃に毛細血管の拡張,粘膜からoozingが見られた.出血部位と思われる部分をAPCにて焼灼.経過を見て食事を開始するが,再び貧血が進むため胃カメラを施行.明らかな出血源は無いが,APCに伴う潰瘍周囲からのoozingが認めたため再びAPCにて焼灼した. 2日後に出血が無い事を確認した.最後の止血術から1週間後,強い腹痛と吐血が認め緊急受診.自発痛はあるが腹膜刺激症状は無く,APC後潰瘍部分からの再出血を疑い内視鏡を施行.食道を越えると腸管外にカメラが飛び出たため即座に内視鏡を抜去し,CT施行.フリーエアを認めた.手術治療を考慮したが,全身状態・年齢を考慮して,ご家族に上記状態をお話しして,保存的治療のみを行う.4日後に逝去された.APC治療は熱の影響が粘膜層内に留まると考えられ安全手技と考えられている.しかし,粘膜がはがれ落ちている潰瘍部や時間を置いて再度治療を行う等の諸条件,肝硬変・腎不全・抗血栓薬内服などの患者背景により,予想以上に熱の影響が胃壁深くにもたらせたことが考えられた.比較的安全と考えられているAPC治療により,重篤な合併症を発症した一症例を経験した.
索引用語 APC, 胃穿孔