抄録 |
【背景】大腸癌研究会の集計によると大腸癌同時性肝転移は11.6%で転移程度もH3が最も多く、同時に肺転移や腹膜転移を伴う例が多いと報告されている。また進行癌が多く、大腸癌イレウスや多臓器浸潤、穿孔等の全身状態が不良な症例も多い そのため同時性肝転移症例に対する肝切除の適応や治療方針は異時性より明確ではない。【目的】当院における大腸癌同時性肝転移症例の臨床病理学的特徴や治療経過を検討する。【対象】2008-2012年までに当院で緩和的手術を含む手術療法を施行した大腸癌318例のうち、同時性肝転移症例30例。同時性の定義は手術療法施行時に肝転移を認めた症例とした。【結果】男性15例、女性15例。平均年齢は66.6歳であった。原発巣の主占拠部位は盲腸2例、上行結腸5例、横行結腸3例、下行結腸2例、S状結腸12例、直腸6例であった。原発巣切除例は23例であり、切除例の原発巣の平均腫瘍径は5.9cmで深達度は全例ss以深であった。7例は原発巣を切除せずバイパスやストーマ増設など緩和的手術が施行された。原発巣切除時に同時に肝転移に対して肝切除を行ったのは1例、RFA施行が1例であった。同時肝切除非施行(21例)の理由としては、肝転移巣が切除不能13例、全身状態不良が2例、原発巣の進行が6例であった。それら21例中15例に術後化学療法が施行され、そのうち9例に2期的肝切除を施行した。そのうち肝転移が切除不能状態から原発巣切除後の化学療法で切除可能となったconversion症例は5例であった。術後化学療法非施行6例中4例で2期的肝切除が施行された。2期的肝切除を施行した11例のうち10例が生存中であり、3例が3年以上生存していた(中央値:1年10カ月 range:1-4.5年)。一方、非肝切除例10例では3年以上生存は1例のみであった(中央値:6か月 range:1か月-3年)。原発巣非切除例7例中5例は3か月以内に死亡した。【まとめ・結語】大腸癌同時性肝転症例においても肝切除は有効な治療であった。しかし、原発巣手術時の全身状態や肝転移状況のため2期的切除となることが多く、全身状態の回復後の有効な化学療法の施行が重要である。 |